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「ありがとう。」
「これぐらい全然！
じゃあ後は頼んだ！」
そう言い残して会社に戻ろうとすると
裾を引っ張られて振り返った。
Aちゃんはメモを取り出し何かを書くと
俺の顔の前に突き出した。
“本当にごめんなさい。
明日はもしかしたらいけないかもしれないけど
出社したら必ず休んだ分取り返します！”
いつもより力ない文字が並んでいて
Aちゃんは今にも泣きそうな顔をしている。
俺は頭を撫でると大きく口を動かしてゆっくり話した。
「大丈夫だよ！
待ってるね！」
俺の口元を見て、理解したのか笑顔で頷いた。
「…やっぱり好きだなぁ。」
つい溢れ出た思いは
運よく車の準備をしに行った照には聞こえていなくて
小さく呟いたからAちゃんにも伝わっていない。
「お大事に！」
今は伝えるべきことじゃないから
そっとこれ以上溢れ出ない様に蓋をした。
戻ってきた照にAちゃんを預けて車に乗り込むと
会社へと急いで走らせた。
「いつか伝えられるといいな。」
まだ気づいたばかりのこの気持ち。
この想いは確かなものだけど
今の俺はAちゃんについて何も知らない。
だからもっと彼女を知って
彼女の抱える障がいに寄り添えるような人間になってから
この気持ちをちゃんと自分の口から伝えよう。
「あ、佐久間ありがとう。」
「いえいえ〜。」
会社に帰るともう定時近くになっていて
会議室に入ると翔太と早見さんが片づけをしていた。
俺も机の上に置かれた資料をまとめていると
隣にいた翔太が近寄ってきた。
「大丈夫だったのかよ。」
「ああ、うん。
照…お兄さんが病院連れてった。」
「そっか、照がいれば安心だな。」
なんだかんだでやっぱりAちゃんが心配なんだな。
そう思っていると早見さんが声をかけてきた。
「明日はたぶん来られないだろうから
3人でできる所まで進めようね。
じゃあお先に。」
颯爽と出ていく背中を見届けると
会議室は一気に静かになった。
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年3月7日 18時
