ハローエフェクト前編 (ページ3)

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「はぁ？」

阿部ちゃんの気の抜けた声と
また口に手を当て笑っている舘さん。
一度口に出してしまった感情は引っ込ませることができず
胸に両手を当てて思いのままに口を動かした。

「あの可憐で美しい彼女の名前は。」

「岩本Aちゃん。」

「年齢とご趣味は…。」

「年は24歳、趣味はわかんないな～。」

舘さんに軽く質問を終えると
さっき一瞬だけ見た彼女の顔を思い浮かべる。
綺麗な髪に透き通る肌、大きな瞳にもちっとした頬
背は見た感じ低めで服装はシンプルな素材引き立つ良さ。

「あの一瞬でよくそこまで記憶できるね。」

「早速思考だだ漏れてる…。」

俺の様子を楽しんでいる舘さんと
この世の終わりみたいな顔をして頭を抱えている阿部ちゃん。
どう思われてもいい、こんな感覚は初めてで
いまだに収まらない胸の高鳴りを両手で抑え込む。

「…佐久間、頼むから
　俺ら以外の前でそれすんなよ？」

「頑張る…。」

阿部ちゃんは諦めたように溜息をつくと
それ以上は何も言ってくることはなかった。

「…じゃあ早速社員のみんなに紹介するね。」

舘さんはそう言って俺らに手招きをする。
いよいよこの会社の人たちと対面すると思うとまた不安が襲うけど
岩本さんもいるんだと思えば少し足取りは軽くなった。

「ちょっとみんな集まってもらえるかな？」

この会社はいわゆるベンチャー企業で
二年前に舘さんが立ち上げた会社だった。
大きなホワイトボードの前に三人並ぶと
それぞれ席についていた社員さんがぞろぞろ集まり
その中にはもちろん岩本さんもいた。

「今日からこの会社で一緒に働いてもらう二人です、
　ピンク頭が佐久間大介で真面目そうなのが阿部亮平ね。」

「俺は不真面目ってか！」

そう言い返すと少しウケたようで小さく笑い声が聞こえた。
岩本さんの方を盗み見てみると
隣に立っている女性からメモを介して教えてもらっていた。
さっきの舘さんと俺のやり取りも教えてもらったみたいで
少し遅れて控えめな笑みを見せていた。

「可愛いっ。」

「…。」

小さく呟いたつもりの声が阿部ちゃんには聞こえていたらしく
鬼の形相で睨まれて身震いをした。