第三章 印象 ページ20
＿Sakuma side＿
「佐久間。」
「…。」
「おーい。」
「…つは！！」
最近気を抜くとぼーっとしてしまう。
今も箸でつまんだ唐揚げを落としても気づかずに
ずっと一点を見つめてしまって
阿部ちゃんの呼ぶ声で我に返った。
「最近ぼーっとし過ぎじゃない？」
「うーん。」
「間抜け顔が増えた。」
「うーん。」
辛辣な言葉に返す気力もない。
その原因は間違いなく
目の前に広がる光景が原因なわけで。
「渡辺さんと岩本さん
最近一緒にいるの多いね。」
「そうなんだよ…。」
「社内で噂だよ、
岩本さんが脅されてるんじゃないかって。」
俺が早見さんと営業に行っていたあの日から
何故か二人に距離は近くなっていた。
Aちゃんに対する渡辺さんの態度は
みんなが知っていることだから
今の状況は衝撃的過ぎて社内が若干ざわついている。
「それはないんじゃないかな〜。」
「だって岩本さんが仲良くするメリットある？
最近入ってきた俺ですら嫌悪感抱く態度取られて
よく怒らないなって思う。」
「俺ら渡辺さんのことよく知らないし
態度だけで決まるのはよくないよ。
それにメリットがなきゃ仲良くしないの？」
俺がそう言い返すと
阿部ちゃんは図星なのか不服そうな顔で黙り込んだ。
皿の上に落としてしまった唐揚げをまたつまんで口に入れ
食べ終わると水を飲み溜息をついた。
「俺は阿部ちゃんといると落ち着くから
こうやって友達になったんだよ！
…て、これも立派なメリットか！」
「…ごめん。」
「何が？」
「こういうの佐久間が嫌なの知ってるのに
つい印象だけで決めつけちゃって…。」
間違っていると思うとすぐに反省して伝えてくれるのは
阿部ちゃんのいいところで
俺は首を左右に振って笑って見せた。
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年3月7日 18時
