いつか君に会えたなら。

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「僕も一緒に行く。」



ようやく駅に着いて電車に乗り込むと
今日は人が少なくて二人並んで座ることができた。
窓の外を何も考えずに眺めていると
そんなことを言われてラウの方に視線を向けた。



「静岡に？」



「うん。」



「遠いよ？」



「それぐらい大丈夫だよ、
　僕も会いたいし。」




きっとラウは私が
もう二度と戻ってくる気がないことに気づいている。
優しいからついて来てくれようとしているんだろうけど
その気持ちが今の私にはすごく痛い。



「…そうだ、3月5日何が欲しい？」



「何で？」



「何でって、誕生日じゃん！」




私の気持ちを察してくれたのか話題を変えてくれた。
誕生日はもちろん覚えていたけど
ラウがそんなことを聞いてくるのは初めてだった。



「めでたい日じゃないし、いらない
　昔から言ってるでしょ？」



「もう18なんだから僕の勝手でしょ？
　盛大にお祝いするの！」



最近言った私の言葉を真似して
ドヤ顔でそう言ってくるからなんだかムカついてきて
肘でお腹を割と強めにつついた。



「痛い！」



「だまらっしゃい。」



「いいじゃん！
　僕にとってはめでたい日なの！」




昔からずっと思っていた、
なんでラウはここまで気にかけてくれるんだろうって。
家庭の事情を知っているとはいえ
心配だからと賢いのにランクを下げてまで
一緒の高校を受験したりと何かと過保護気質なところがある。



「本当は毎年お祝いしたかったんだよ？」



「…。」



「Aちゃんが生まれて来てくれた大切な日なのに
　そんなに自分を下げて見ないでよ。」









父と母が離婚することになり、親権をめぐり
話の内容はわからないけど揉めている二人を見て
私は生まれてきちゃダメだったんだと
幼いながらに感じて生きてきた。









親権が母に決まって離婚が成立したのは
皮肉にも3月5日だった。









「めでたくなんか、ないよ。」









3月5日なんて、辛いことばかりで嫌いだ。

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