合格にむけて ページ10
あの後新居に移ってから散々勉強させられた。
ぼくはちゃんと問題を解きつつ答え合わせもして、わからないところはお父さんに聞いて、とちゃんと勉強していたんだけど、あーちゃんは答えを一生懸命覚えていた。
お父さんはスパイだからか、試験の問題用紙や答えを持っていた。
勉強のできないあーちゃんは覚えるしかなかったみたい。
それさえもあーちゃんには苦行だったみたいだけど。
それから今日、たくさんの人が集まるとっても広い試験会場に赴いていた。
実際中に入ってみると、あまりの人の多さに目眩がするかと思った。
このなかから、試験に受かるのは半分にも満たない。
これは相当がんばらないといけない…!
そうしてテストが配られ、いよいよ試験が始まった。
わからない問題もあるけど、全部が全部というわけじゃない。何度も復習した問題もある。これならなんとかいけるかも。
問題はぼくじゃなくてあーちゃんだ。
なんという偶然か、あーちゃんとぼくの席はひどく離れていてテレパシーで教えることができない。距離が一定以上離れていると使えなくなるこの能力を生まれて初めて恨んだ。
ぼくは使えないけれど、あーちゃんはもしかしたら使えるかもしれない。
まだこの距離なら聞こえるかもしれない。
――でも、聞こえなかったらどうしよう?
ぼくだけが合格なんてことになったら、どうしよう?
いや、最悪ぼくもあーちゃんも落ちてしまうんじゃ。
そんな不安に駆られていると、ふと脳裏に必死に答えを覚えるあーちゃんの姿が浮かんだ。
ちょっとせこい方法だけど、ずっとがんばっていたのは確かだ。
ふたりで合格しようって約束もした。
ぼくが信じないでどうする?
そうだ、あーちゃんはあんなにがんばってたんだ。
ずっと一緒にいるために。
だから――信じよう。
それよりも……ぼくががんばらないと!
ふたりいっしょに合格できるように!!
ぼくは鉛筆を強く握りしめて、プリントと向き合った。
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