うそつき ページ9
出口を出ると、お父さんはぼくたちを下ろした。
「あのなお嬢ちゃんたち」
「アーニャとA」
「あのな、アーニャちゃんとAちゃん」
お父さんはぼくたちに言いつけるように話した。
「おじさんたち実はプロの鬼ごっこ集団なんだ。才能がありそうな人を見つけては突然勝負を挑んでるんだ」
『「ほう」』
お父さん、すごいうそつき。
「いいかい、このまま真っすぐ行って通りを右にずっと歩くと警察署がある」
お父さんは折り畳まれた紙をぼくに渡した。
「そこで警察の人にこれを渡せたら君たちの勝ちだ。わかったか？」
この紙を渡せたら――。
でも、それじゃお父さんは……？
「ち…」
「よし行け！早く！！」
お父さんに急かされ、ぼくたちは慌てて走り出した。
どうしよう？このまま警察署に行って、お父さんはどうなるの？
お父さんは？
振り返ってお父さんを見る。
おじさんの皮を思い切り剥がしたお父さんの後ろ姿は、無性にかっこよくみえた。
スパイだった。
とってもかっこいいスパイ。
.
「おまえら！？」
あーちゃんとアリの行列を見ていると、ずっと待ちわびていた声が聞こえた。
「ちちぃ〜〜！！」
『お父さ〜〜っ！』
結局ぼくたちは警察署には行かず、ここでお父さんを待っていた。
「おまえらなんで…あ…いや勝手に家出て何してんだ」
『お父さんはなにしてた？』
「いやーオレは偶然ここに買い物に来たんだが潰れちゃったみたいダナー」
お父さん、すごい嘘つき…。
「アーニャたちおじさんとおにごっこしてた」
「そ…そうか、楽しかったか？」
「……ちょっとこわかった」
あーちゃんは顔を伏せて、お父さんの足に縋った。
「アーニャおうちかえりたい」
『ぼ…ぼくも、帰りたい、ぼくたちとお父さんのおうち』
――捨てられたくない。
まだ、お父さんと一緒におうちで生活してたい。
「いい…のか…？」
「おいてかれたらアーニャたちなみだでる」
既に涙は出ているけど。
「……そうか、じゃあ帰ろう」
お父さんはそう言ってぼくたちの頭を撫でてくれた。
それに安心して、うれしくて、つい涙がこぼれてしまった。
「だかあの家は危ないから引っ越そう。昨日毒ヘビが出たんだ」
『ヘビきらい』
「アーニャも」
お父さんは、すごい嘘つきだけど。
――かっこいい嘘つき！
「新居に移ったら勉強だぞ」
「む゛あっ！？」
「今度のは見て覚えるだけだ。カンタン」
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