わるいひと ページ8
気がついたら、知らない場所にいた。
ぼくもあーちゃんも口と体が縛られていて身動きひとつ取れない。
「で、このガキはなんだ…?」
変なおっさんがいっぱいいるところ。
ただならぬ雰囲気が漂っていてすこしこわい。
「まさか黄昏の…?」
「わかりません、発信源の部屋にいたので念のため…」
発信源…て、
まさか通信のせい……!?
どうしよう、ぼくがちゃんとあーちゃんのこと止めてたら……。
「まあいい、人質として使えそうならこいつを盾にとって 外務大臣のヅラを黄昏本人に直に奪ってこさせる」
「…ボス、ヅラはもう諦めた方が…」
「ん?」
すると、ボスのおっさんがピストルを出した。
そして、静かに放った。
パンッ、ていう爆発音みたいな音はしなかった。
目立たずに、人が撃たれた。
――音の出ないピストル。
本物の悪い人だ…!!
「ボス!!家を張ってたグエンたちが戻ってきた!!」
窓から黒い車が来たのが見えた。
また仲間増える…!
そして、袋で顔が隠され、手首も縛られたお父さんが転がされた。
そんな……お父さん……。
「うぅ…素人の動きじゃなかった…!本物ですよ…!」
「向こうで休んでろ」
足取りが覚束無い丸刈りのおじさんがこっちに寄ってくる。
「――!」
すると、あーちゃんが何かに気づいたようだ。
(あーちゃん?このひと、なにかあった?)
"このひと、ちち!"
――お父さん?
考える暇もなく、ぼくたちは丸刈りおじさんに抱えられてその場を飛び出した。
(お父さん?このひと、お父さんなの?)
"ちち…!"
あーちゃんが目を潤ませたかと思えば、今度は号泣し始めた。
「ちびゃ〜〜〜〜っ!!」
「うおっ!?大丈夫おじさん何もしない!!こわくないよ〜」
……ほんとだ。
このひと、お父さんだ!
そう思うと、安心と感動でぼくも涙が出てきてしまった。
『あぅ〜〜〜〜』
「ちぶぁ〜〜〜」
「…??」
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