父 ページ3
おっさんだ。隣にはあの人が立っている。
「ウチで一番賢い。無口だがまあ……いい子さ」
そう男の人に説明してから、ぼくに挨拶しろと言う。
この人に、ってこと？
「えーっと、すみません」
"イーデン校の奨学年齢は6歳から…この子はどう見ても4 5歳かそこら…"
そんな声が聞こえた。
あーちゃんが心を読んだんだ。
それをぼくが感じ取った。
『むっつ！』
「ん？」
『ぼく、むっつ』
そう言い張ると、"いや身長とか――"という声が聞こえたので、ぼくは背伸びをして身長を伸ばす。
むっつにみえるように。
あーちゃんは机から新聞と鉛筆をとってきて、ぼくに渡した。
"これといて！"
と言っている。
心の中で返事をすると、ぼくは新聞に載っていたクロスワードを解き始めた。
むずかしいけど、あーちゃんの力を借りてなんとか解く。
するとぼくの頭がいいと判断したのか、引き取られることになった。
でも、ぼくは一人は嫌。
『いっしょがいい』
ぼくはあーちゃんと手を繋いだ。
「ん？……双子か？」
「アーニャも、Aといっしょがいい」
「うーん……まぁ、いいだろう」
男の人は少し渋った後、了承した。
あーちゃんと一緒だ……！
ぼくは喜んだ。
その後男の人は手続きを済ませ、ぼくたちを外に連れ出した。
孤児院のみんなと別れを告げてから、新しい家に向けて歩き出す。
「いいかお嬢ちゃん達」
『アーニャとA！』
「いいかアーニャ、A」
「今日からおまえらはウチの子になるが周りの人には元々の親子だってことにする。わかったか？」
『あぃ』
「うぃ」
「上流らしく、オレのことはお父さまと呼ぶように」
『お父さん』
「ちち！」
「よし」
そんなことを話しながら家の近くまでくる。
途中出会ったおばさんと挨拶する。
「あらかわいいお嬢さんね、こんにちは」
「今日越してきたフォージャーです」
そっか。ぼくたち、いまフォージャーって名前なんだ。
そうだ、ぼくも挨拶しなきゃ。
『こんにちは、Aです』
「ずっとまえからちちのこどものアーニャです」
「うん？」
「ほら部屋に入ろうな」
新居にいける。わくわく！
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