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外れかけのテーピングを丁寧に剥がす樹音先輩。
「良かった。思ったより熱持ってない」
彼の手が優しく右ひざを撫でればビクッと肩が揺れてしまう。
それに気付いたのか、彼はゆっくりとAを見上げた。
「いつから？」
少し切なそうな声にドクンと心臓の鼓動がずれる。
「…去年の冬に」
答える必要も無いのに震える声で答えてしまう。
「Aちゃんのプレー、見てみたかったな」
そう言いながら目を伏せると、彼は丁寧にAの右ひざにテーピングを施していく。
その優しい所作にまるで自分だけが大切にされてるような気になって。
違う。
彼は誰にでも優しいんだから。
女の子なら誰でもいいやつなんだから。
何度も頭に教え込むのに高鳴る心臓は静まったりしない。
だからAは強く唇を噛み締めた。
「そんなに噛んだら痛いでしょ」
その声にハッとして唇を解放すると、長い指がAの唇をスっとなぞった。
「ほら、血滲んでる」
テーピングはいつの間にか終わり、床に片膝を付いた状態でAを見上げる彼の表情は少し切なそうで。
それがまたAの鼓動をブレさせる。
「俺を見るAちゃんはいつもそんな顔だね」
「え？」
言ってる意味が分からない。
「キスしたくなる」
「なっ、何を、」
後ろに下がろうとして床を蹴るがそれは空振りで、反動に後ろに倒れそうになるとAの身体はふわりと抱きしめられた。
「ほんと危なっかしいね」
「は、離してください！」
力いっぱい両手で樹音先輩の肩を押すと彼は抵抗することなくAからゆっくりと離れていく。
「嫌がる子には何もしないよ」
耳元で聞こえる澄み切ったこえはAの背筋をゾクリとさせる。
「だから消毒だけ」
ペロッと赤い舌が簡単にAの唇を撫でるから、Aは大きく目を見開いた。
「ゆっくり着替えてきな」
いつもの笑顔でそう言うと彼はAの前から、保健室から姿を消した。
それでも頭の中まで響いてくる心臓の音はしばらく静まったりはしなかった。
「Aさん、ごめんね。私がいない間大丈夫だった？って大丈夫じゃなかったよね」
体育館に入るなり駆け寄りそう言い放つ高橋先輩にAは苦笑いを浮かべる。
彼女が右ひざのことを言っているのは分かっているがそれ以上に『大丈夫』では無かった。
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あいうえお - 解釈不一致なのに新しい道が開けたっていうか全て星様の文才によるものというか、ほんと面白いです、これからも応援してます！！！ジュノンくん最高！！！！！ (5月23日 21時) (
レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 天才すぎます、ありがとうございます、読み続けます、、、、 (5月23日 21時) (レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 最近の中で一番好きな夢小説です、！ (5月22日 23時) (レス) @page35 id: 7c9597bb9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星 | 作成日時：2023年5月18日 20時
