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近付いてくる唇を拒むことなんて考えは浮かんでこない。
そっと触れるだけのキス。
それだけで身体を支える腕が震えて。
彼の腕が優しくAの背中を支えた。
その手は暖かくて、優しくて。
「…やめてください」
Aは両手で力の限り樹音先輩の胸を押しのけた。
この優しさは『女の子』に向けられるもの。
彼にとって特別でもなんでもないことを知っているから。
「私、キスしてなんて言ってません」
逃げなかったくせにこんな台詞はおかしいって分かってる。
でもほかの台詞が浮かばなくて。
だから彼の顔を見ることをせず俯いたままそう言うと上から小さなため息が降ってきた。
「そうだね」
「A！」
その時、勢いよくドアが開け放たれ、同時にAを叫ぶ声に顔を上げた。
「…ソウタ」
息を切らせながらソウタが歩み寄る。
「大丈夫？さっきAが運ばれたって聞いて」
ソウタは睨むような目付きで彼を見ながら言葉を紡ぐ。
「俺が運んだんだよ」
「知ってます」
だから来たんだと言わんばかりの台詞に、樹音先輩は少し困ったような笑みを浮かべた。
「じゃあ俺戻るから。Aちゃんはもう帰っていいよ」
「俺が送ってってもいいすか？」
突っかかるようなソウタの台詞に彼はいつもの笑みを浮かべ「ご自由に」と言い残し保健室を出て行った。
ドアが閉まるとソウタは居心地悪そうに「えっと、」と静かな空間に声を震わせ始めた。
「大丈夫？」
「あ、うん、ちょっと打っただけで」
傷のことじゃないことを知りながらAがそう答えるとソウタは「そう」とだけ返す。
窓の外からは野球部の声やボールとバットのぶつかる音が聞こえてくる。
「ソウタも部活行って？私ひとりで、」
「送る」
遮るソウタの台詞に「でも」と返すとソウタはいつものようにニカッと笑う。
「Aの事送れば、俺今日の部活堂々とサボれんだけど」
そんなソウタにAも何それ、とつられて笑みを浮かべてしまう。
「じゃあ、お願いしようかな」
そう答えるとソウタは笑顔のまま手を差し出した。
「更衣室まで肩貸す」
その行為はとてもソウタらしくAは「ありがと」と笑顔でその手を取った。
湿布が効いてるのかテーピングが上手なのか。
引きずるような形ではあるが、Aは何とか歩けることを確認し、急いで制服に着替えた。
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あいうえお - 解釈不一致なのに新しい道が開けたっていうか全て星様の文才によるものというか、ほんと面白いです、これからも応援してます！！！ジュノンくん最高！！！！！ (5月23日 21時) (
レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 天才すぎます、ありがとうございます、読み続けます、、、、 (5月23日 21時) (レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 最近の中で一番好きな夢小説です、！ (5月22日 23時) (レス) @page35 id: 7c9597bb9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星 | 作成日時：2023年5月18日 20時
