ボーダー隊員は呪いの世界へ (ページ35)

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呪霊33匹目ページ35

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「ない」

「良かった！真希さん達に伝えてくるね！」

憂太の嬉しそうな顔を見たら、嫌な気持ちも吹き飛んだが、代わりに好きという気持ちが湧き上がってくる。ダメだ、蓋をしなければ

「…千尋ちゃん、何かあった？」

「何が？」

「あ、いや。気の所為じゃなければ、何か思い詰めたような顔していたからさ」

「何もないよ」

「そっか…何かあったら、何時でも僕に相談してね！力になるから！勿論、真希さん達にも！」

辞めて、優しくしないで。これ以上好きにさせないで、好きになったらいけないのに…そんな私の気持ちを気付かず笑う君に如何したらいいんだろう

「じゃ、今度こそ僕行くね！」

そう言って立ち去る憂太を見つめ、不自然にならないようにドアを閉めて寄りかかりながら座る

「っ、溢れるな、蓋をしろ…想像しろ」

1つの箱を思い浮かべその中に好きだという気持ちを入れて、蓋をし布で包み込んで鎖を巻いて鍵をかける。ほら、

「何もない」

それから憂太に会えば気持ちがまた膨らんで出来る度に、それを繰り返せば慣れてきた。そんなある日、五条先生が声をかけてきた

「千尋」

「何ですか？」

「××家の次期当主と結婚するって、本当？」

「はい」

そう言えば、五条先生と私のいる場所の雰囲気が重くなった

「千尋なら断る筈でしょ？なのに、如何して」

「…当主の孫娘と私の母が人質なんです。断れば、どうなるか分かりません」

「なら、僕に助けを求めたって」

「悟さん」

先生の名前を呼べば口を閉じてくれた。私が先生の名前を呼ぶのは、余っ程な時だけだ

「悟さんは頑張りすぎ。私や憂太の秘匿死刑の時だって、無理矢理消してくれた。それ以外だって、色々と私達の為にやってくれてるのは知ってる。私はね、悟さんに感謝してるの」

彼奴と同じように独りにはさせない。幼子のように優しく話せば、先生は深い溜息をついた

「分かった。でも、本当に助けて欲しかったら言ってね？千尋は、僕の可愛い生徒なんだから」

頭をポンポンと優しく撫でて、私は先生にお辞儀をしてからその場を去る。去っていく姿を、先生が見つめていたなんて知らなかった

「それは千尋もでしょ。何でもかんでも独りで背負い込んで、僕の代わりに任務を受けて、いつも通りの顔をして過ごしている」

あの小さな背中で小さな体で周りから時期最強と呼ばれていて、上層部に反抗して。君はまだ若いんだよ？

「何人たりとも、若人の青春は邪魔させない」

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