ボーダー隊員は自転車競技部へ (ページ5)

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黒田雪成ページ5

数日前真波がレギュラー入りに決定された。まぁ彼奴の実力なら、レギュラーは確定だからな

「はい、ドリンク」
「ありがと〜」

真波にドリンクを渡した所で、ふと気付いた。あの人、ちゃんと水分補給をしていたのか？

「…此処にいたんですか、黒田先輩」
「…マネージャーか」
「タオルとドリンクです。今日、気温が高いので水分補給しないと熱中症になりますから」

日陰で項垂れている銀髪の青年こと黒田先輩にタオルとドリンクを渡し、この場から去ろうとするが無言で隣に座る。本来なら去ればいいのに留まるのは、こういうタイプは放っておくと面倒くさい事になるからだ

「…行かねぇのかよ」
「休憩です。さっきから動きっぱなしでしたから、少しは涼みたいんですよ」

一切先輩の方は見ず、空を見上げる。雲ひとつのない眩しい程の青空だ

「…俺は中学の頃、周りから『スポーツの天才』と呼ばれていた。どんなスポーツも必ず点を取っては試合で勝っていた。だが此処に入部した時に、荒北さんにクソエリートと言われ、反感して勝負をした結果は負けた」

やっぱり、何となく黒田先輩てそんな感じしていたんだよね←

「この1年、ロードだけ集中し努力をしてきた。この間の選抜で一年の真波に負けた」

そう言って俯く黒田先輩に、私はつい口を出してしまう

「私が今から話す事は独り言なので、聞き流していいです」
「は？」

急に話し出す私に先輩は戸惑うが、気づかないふりをする。こう見えて私はお節介なんだ

「どんなに努力しても頑張っても、必ず自分よりも常に前に上に人はいるし、自分には持っていないモノを持っている」

あの太刀川や二宮、村上先輩やカゲさん、遊真に修…ボーダーには化け物がゴロゴロといる

「それでも必死に足掻いて、その人が出来ないモノを自分のモノにして、足りない部分は他で補い、勝つ。形は何でもいいんですよ、その人よりも優れていれば」

私には力がない。あるのは知恵と技術、その他諸々としかない。だからこそ、その足りない力をカバーするしかないのだ

「足りない部分、を補う…」
「却説、私はそろそろ戻ります。他の仕事もありますから」

黒田先輩はきっと之から今以上に成長するだろうな。今迄自分の才能に酔っていたが負けを知り、更には後ろから追い越される事も

「あーあ、修達に会いたいな〜」

ホームシックならぬボーダーシックだ。今頃、何をしているんだろうか、皆んなは

「仕事、頑張らないと」