十話 ページ10
戸締りを終えて鍵を職員室に返した。先生たちからの視線はいつもと変わらない。うちの教師はあまり生徒に興味がない。学校が学校なら、教師も教師だ。
それと比べると生徒たちの神経がどれだけ鋭く針のようになっているか、よく分かる。廊下をすれ違うだけでも小さく怒りのこもった舌打ちが聞こえる。
「はぁ……どうしてこうもウチは教師生徒共に酷いやつらばかりなんだ?」
「僕たちがどう思われてたか嫌でも分かるね」
「だな。負けた途端目の色も変えて掌を返しやがる。頭くるぜ、本当」
足立の言うことも分からないこともない。同じ立場だから分からないはずもないけど。社会もきっとこんなのなんだろうなぁ。
……ちょっと泣けてくる。
「あ」
「え?どうしたの?」
「ーーー天高の奴」
彼の指の先には今最も輝いている学校の制服を着た男がいた。しかも見覚えがある。
「神宮寺くん」
天高のエースストライカー、神宮寺晴翔くん。去年、二年生の時にサッカー部に入ったらしく、彼の活躍はテレビで引っ張りだこになるほど。家も裕福らしく、文武両道にルックスもいい。まさに理想の男だ。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しげの2号 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月28日 22時