三十話 ページ30
着替えが終わって、僕ら三年と二年は練習のための準備に取り掛かる。一年生には校舎周りを走ってもらうことにした。ルートは決まっているから、覚えてもらうためにもまずは上級生と一緒に走ってもらおう。
「宮野!」
たまたま近くを通りかかった宮野の肩を叩いて引き止める。宮野は嫌がることもなく自然にこちらを振り向いた。
「はい」
「一年生と校舎周り行ってくれない?」
「分かりました」
二つ返事でOK。お願いね、とだけ告げて僕はグラウンドに走った。グラウンドでは石灰でコートをかく人、ラダーやコーンを取り出す人、メジャーを使う人。みんながみんなそれぞれことをこなしてくれていた。
「キャプテン」
「ん?ゆずちゃん」
ジャージに着替えたゆずちゃんは肩にクールボックスを下げ、片手にファイルを持ったいつものマネージャースタイルで僕の隣にやって来た。そしてファイルから一枚の紙を取り出して僕に見せた。紙には顧問の先生が作ったであろう、練習メニューが印刷されていた。
「これは上級生に、こっちは一年生向けだと先生からの指示です」
「ありがとう」
僕に必要なものを届けると、すぐにベンチに行ってしまった。そうそう。ゆずちゃんはこうだよね。クールで冷たいけど、頼れる子で……すぐ抱きつくようなキャラじゃなかった、んだよね……ハハ。
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作者名:しげの2号 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月28日 22時