天下無敵の敗北 (ページ27)

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二十七話ページ27

部室にある中で一番大きなベンチに、男が女に組み敷かれている。男は足や手をバタつかせて迫ってくる女に抵抗する。彼が本気になれば、彼女なんてすぐに退かすことができるはずなのに……それは彼の優しさなんだろうか？

「部室で何やってるのー！藍原ー！」

鈴木がはわわと組み敷いている女に声をかけた。そう。上に乗っているのは山本の大好きな藍原柚華ちゃんだったのだ。マネージャーをしている時と性格が180度変わっている。まるで別人のよう。

うしろから覗いていた栗山くんが、組み敷かれている男を見て驚きの声をあげた。

「春夏秋冬(ひととせ)？何してんだ？」

「んぁ？あ"っ！クソ山！」

名前を呼ばれて体を起こし、栗山くんを見るなりかなり失礼な呼び名で呼んだ。二人はクラスが一緒らしい。
さっきまでの抵抗が嘘のように軽々とゆずちゃんを上から退かせてものすごい目つきで栗山くんに迫った。

「クソ山って、ひど」

「クソ山にクソ山言うて何が悪いんや。お前見た目と違ってホンマ性格悪いからな！」

「女性に迫られて足掻いてる四季くんに言われたくないなぁ」

「んやとクソ山ァ！！」

一触即発。というかもう爆発している。そんな二人をとめるのには時間がかかった。