一話 ページ1
鳴り響くホイッスルは、あまりにも酷かった。
あぁ、勝利の女神様。こんなの、こんなのあんまりではないか。一体僕らが何をしたっていうんだ。
「勝ちました!天川高校の勝利です!」
「これこそ世紀の番狂わせでしょう」
抱き合う天高の選手に対して、僕は膝から崩れ落ちた。皮肉にも、天気も歓声さえも彼らの味方をしている。
僕らは、敗けた。唯一の栄光をその手から失った。
「なんてこった……」
「どう、するんだよ。こうなったらウチはもう終わりじゃないか!」
先輩の悲痛な声が耳に張り付く。僕の手はその声が形になったように、カタカタ震えていた。
こんなドラマじみたことが起こるだなんて、誰が想像しただろうか。あまりにも恐ろしくて、僕はその震える手で顔を覆った。恐怖が涙とともに零れ落ちる。ひた、ひた、と。
「佐伯」
「キャプ、テン……」
一際顔を蒼白にしている僕に、キャプテンは恋人を慰めるように肩を引き寄せた。そして同じようにぽたぽたと大粒の雨を降らせた。
「すまない、すまない。お前たちに、重荷を渡してしまった。本当に、すまない」
嗚呼、嗚呼。神様。どうして、キャプテンや先輩たちを笑顔にさせてくれなかったのですか?
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作者名:しげの2号 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月28日 22時