手に残るは赤か青か。 【kn】 ページ8
※７話の【手紙】を拝読を推奨します。
ｰｰｰ
二年前。私は命からがら彼から逃げた。最初は聖人君子のようなまさに理想が具体化されたような容姿。美しさとは裏腹に少し無邪気さや少年のようなあどけなさのようなものがたいそう可愛かった。愛をたくさんたくさん貰った。物も。
彼は惜しみなくハイブランドの物を私に買い与え、さぞ当たり前のように笑うのだ。
そんな順風満帆な新婚生活＿＿＿ならよかったのだが。
彼は少しずつ、おかしくなっていった。いや、もともとか。
暴力をふるう様になっていた。しかし飴と鞭の使い分けがたいそううまかった。離れられない。依存していた。
ぶるりと震える体を抱きしめて、いま彼とは違う彼氏を待っている。今度の男性は優しくて、カウンセラーの仕事をしている。今度こそ本当に素敵な人と巡り会えたと感じる。
鍋の中のシチューをかき混ぜ、火を止める。
帰りが遅い。ふとスマホを見つめた時。
がたん。
ほんの僅かな物音が耳に届いた。
次の瞬間、体全体に圧迫感が。まるで人に抱きしめられているかのような感覚である。人、いないのに。その恐怖から小さく悲鳴を上げて、身を捩った。こわい。その言葉のみが頭を埋め尽くす。
お願いはやく帰ってきてと
心のなかで念じる。しかしどれほど願おうと、彼の姿は見えない。
ボロボロと涙をこぼせば指の感触がした。
ふわふわとスマホが浮き上がり、
どんどんと文字が打ちこまれていく。
〈大丈夫。ごめんな遅くなって。有りえないことだけど透明人間にされた〉
『な、なんでッ』
ぎゅむりと眼の前の感触のみが伝わる彼と思わしき人物に取り縋った。彼は優しく私を抱きしめた。ぼーっとしながら彼の腕のかなで泣いた。少し泣いたら冷静になった。
『ご飯食べよう、』
ゴツゴツとした手の感触が伝わってきた。握られているのだとなんとなくわかって少し涙の光る頬で微笑んだ。食事はどうやら普通に行えるようであった。ご飯が消えてくのを見るのはなんとも奇妙な感覚だったが。スマホで調べてみることにする。
ご飯を食べ終わったのか、彼がこちらにやってきた気配がした。
唇に温かい感触がしてそのまま押し倒された。
❥
もとに戻る方法を探して一週間。奇妙なこの生活にも慣れ始めた頃。急な不快感に襲われトイレに駆け込んだ。生理が来ていなかった。検査薬キットを購入した。
陽性だった。
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り〜。 - ストーリーが毎回凄くて、短編で読みやすくて飽き性の私でもスラスラ読めました！！なぜ延びないのかとても不思議です。こんな凝った話を作るなら100大変だとは思いますが、更新頑張ってください！ (3月14日 9時) (
レス) @page27 id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
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