佰参拾伍 ページ7
映像が見えた。
五秒後に、ジイドが撃つ。
私の眉間に一発、心臓に一発。
どちらに避ければいい。
横か。
──いや、それを予測して弾道を横方向に修正される。
下か。
──いや、屈んでも同様に予測・修正される。
残り三秒。
そこで私は、ふっと笑った。
──矢張り、彼は“彼奴”と同じだ。
残り一秒。
私は両手の銃を連続で撃ちながら敵に突進した。
そうして地獄が開始した。
銃火が二人の中央で閃く。
互いに駆け寄った私とジイドは、弾丸を応射しあいながら接近した。
いくつもの弾丸が耳朶の傍を抜けた。
コートの裾を引き千切った。
両手の甲で、相手の銃を外側に払った。
ジイドの銃が一度左右に押し退けられ、円を描くような起動で再び中央に戻ってきた。
私の胸を狙って、“灰色の幽霊”が火を噴いた。
相手の鼻を抓めそうなほどの至近距離だ。
顔を挟むように左右並行に撃たれた弾丸の両方を躱す余裕はなかった。
私はとっさの判断で顔を左にそらして右の弾丸を回避し、もうひとつの弾丸を拳銃の銃把で防いだ。
手のひら全体に殴られたような衝撃と痺れが走り、左手の拳銃が弾き飛ばされた。
銃の向こうで、ジイドが唇を歪めて嗤うのが見えた。
ジイドの銃は二挺、こちらはひとつ減って一挺。当然その分だけ不利になる。
──一挺の拳銃が、どこを向いているかにもよるが。
右手の拳銃──私がまだ握っているほうの拳銃は、既にジイドに向けられていた。
弾丸が発射される。
ジイドは体を大きく振って躱そうとした。
だが移動距離が足りず、左の二の腕に着弾した。鮮血が後方に飛散する。
「くっ……」
弾丸を受けたために拳銃がすっぽ抜け、床を転がっていく。
ジイドは床を蹴って後方に距離をとった。
『未来が読めなかった気分はどうだ?』
私は右手の銃を構えたまま問いかけた。
「この世のものとは思えぬほど……最高の気分だ」
ジイドが答える。
どのような未来を予見しても、それを元にどのような回避行動を取ろうと、相手にそれを“上書き”され反応を修正される。
この問題を解決する単純にして究極の方法はひとつ。
“異能に頼らなければいい”のだ。
私とジイドは残った一挺の銃をつきつけあって対峙した。
ジイドは半月形の歯を見せて嗤っていた。
……私は屹度、懐かしむ様な表情で笑っていただろう。
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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時