佰参拾参 ページ5
そのまま敵が力を込めれば私の肩は永遠に破壊されていただろう。
だが未来予見能力を持つ者と近接格闘をすべきではない。
例え私が男に力が劣る女であるとしてもだ。
この状況が最初から私の狙いだった。
私は自由になる右手で拳銃を摑み、躰を曲げながら
空薬莢が跳ねる音が乾いた鈴の様に響いた。
私の手を捻り上げていた男は力を失い床に倒れた。
その腹には弾丸がめり込んでいた。
先程私が撃った弾丸が跳弾し突き刺さったのだ。
私は胸の激痛をこらえ乍ら防弾ベストを確認した。
胸に三発、鉛玉が食い込んで止まっていた。
私はベストを脱ぎ、床に捨てた。
肋骨にヒビが入ったかもしれない。
「う……」
振り返ると副司令官にはまだ意識があった。
だが持って十分程度だろう。
『とどめは要るか?』
私は銃を拾い、副司令官の胸元に銃口を向けながら訊ねた。
「……ああ……頼む…………」
喉の奥に血が溜まって要るのだろう。
か細い声で副司令官は答えた。
『何か云い残すことは?』
「有り難う……戦ってくれて……」
副司令官は目を閉じた。
銃創の痛みは壮絶な筈だが、彼は薄く微笑んでいた。
「
私は引き金を引いた。
副司令官は僅かに痙攣した後、力を失った。
私は立ち上がり弾倉を交換した。
そして歩き出した。
『ああ、判っている』
戦場の扉を抜けて進んだ先は、広大で天井の高い
その気になれば百組のペアがバロック・ダンスを踊れそうな大広間だ。
三階ほどの高さの天井から、朽ちたシャンデリアが斜めに垂れ下がっている。
部屋の両側には、金刺繍の入った深紅のカーテンが垂れ下がっている。
カーテンは至る所でほつれ、破け、かつての栄華を怨嗟するように部屋を暗く引き立てていた。
広間の奥に二つ、手前に二つ、樫の扉が設えられていた。
部屋の中央まで歩いた時、背後から声がした。
「一粒の麦、もし地に落ちて死なずばただ一つにてあらん。死なば……」
私は即座に両方の銃を抜いて、振り返りつつ声のほうに構えた。
その男はそこに居た。
銀髪に銀衣、端正な顔の亡霊。
_そして彼奴と同じ境遇を持つ男。
銃を構えたまま私は言葉を引き継いだ
『─死なば多くの身を結ぶべし』
幽霊は目を細めて笑った。
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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時