佰伍拾弐 ページ24
『だからお前には子供達と親爺さんを守り、夢を叶えて欲しい』
「既にその資格は無くなっている。切っ掛けでもある子供達を助けたのはお前だ、A。俺では駄目だった。だから」
『無理だとでも云う心算か?……巫山戯るな』
私は知っているぞ、作之助。
親爺さんや子供達を一番に考えていたのは私でも仁でも他の誰でも無い、お前だろうが。
確かに本来ならば私と同様の結末を迎えていたに違いない。
大切な者達を失い殺し、血濡れた……そんな在るべき筈の
でも、お前は違う。
私と云う
『お前が出来ないと云うなら、一体誰があの子達を守れる?管轄外になり危険が増した状況の中、誰が守ると云うんだ?__お前は、己で決めた使命から逃げ出すのか?』
今のお前の胸中はよく判るよ。
でもな……逃げるな、恐れるな、立ち向かうしか道は残されてないんだ。
手を伸ばすだけでも殆ど限界だと云うのに更に、ぐっと彼の胸倉を掴んで顔を無理矢理近付けると彼は少し焦った表情で私を見た。
『全てを失ってでも、これから訪れる罰を受け入れてでも、お前に託す為に私は今迄生きてきた!守りたいものを守れなくて、守ろうと思ったものに最期まで何も出来なくて、自分が佳い人間になろうとしたがなれなかったから!友人にはもっと別の生き方が出来る事を知っていたのに、踏み込むのをやめてしまったから!私は最期の最後に、友に夢の一部を託して……っ!……ゲホッ、ゲホッ』
喉奥から何かが込み上げる感じがして私は咄嗟に反対の手で口を覆って咳き込んだ。
__掌には、べっとりと私の血が付着していた。
拙い、本当に拙い。
未だ全て伝え切れてないんだ。
頼むから、もう少しだけで善いからお願いだ。
『私と違ってお前には未だ“資格”がある。やり直す事が出来る。お前は優しい。此方が泣きたくなる程優しい奴なんだ。その優しさを持てば、屹度出来る。出来る、出来るんだよ……!だから、どうか、どうかッ……!…………諦めないでっ』
震えた声で全ての思いを告げ、私は縋る様に彼の胸に額をつける。
その時、指先に力が余り入らず本当に彼の襟衣を握っているのかさえも判らない事に少しの恐怖を感じた。
後二人。
私は導かなければならないと云うのに。
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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時