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『仇を取る決意をした私は友の制止を振り払い、あの洋館に行き彼と戦っている最中ふと思ったんだ。こんな私が全てを賭けている目の前の彼に勝って仇を取ったとして……その後、生きる価値なんて本当にあるのかと』




話している内に段々と胸が苦しくなる。
その苦しみは勿論彼に撃たれた様な物理的なものでは無い。色々な思いが胸の中で暴れている様なものであった。




『それでも、全てを諦めていた私でもあの時は本気で戦った。親爺さんや子供達の為、そして組織の首魁だった彼の為に……結末は神も知っているだろう?』




周りから見れば恐らく今の私の笑顔は自嘲的なモノだと思う。上手く笑えないし笑うつもりも無い。唯、己の無力さに嗤うだけだった。


私の言葉を確りと聞いていた神は少し目を閉じて何かを考えていたが、やがて何かを決意したかの様な表情をして私の目を見た。




「君には何かしら罰を与えなければならないんだ。そして今考えた。君に与える罰は違う世界に行き、もう一度人生をやり直す事だ」


『は?』


「その世界は君も善く知っている世界だ。話が判る分、色々立ち回りし易いだろうし。何よりやり直すには丁度善い世界だ……ああ、判らないって顔をしてるね?大丈夫、之から暮らしていく事になる世界の事だし名前は教えてあげるよ」




先刻(さっき)から神は何を云っている?
脳が働きたくないと悲鳴を上げているのかズキズキと痛む。


否、若しかしたら判りたく無いのかもしれない
判ってしまったからこそ、その先の言葉を云わないで欲しいのかもしれない。




「その世界の名は“文豪ストレイドッグス(・・・・・・・・・・)”」




──ああ、云ってしまった。
ガツンと鈍器で頭を殴られた様な衝撃が走った気がする。


その世界の事は神が云った通り善く知っていた。
私が最初に手を差し伸べた子供、“(ゆい)”と云う養っていた孤児達の中でも最年長であり、とても笑顔が素敵な可愛らしい女の子が愛していた漫画の名前だ。


あまり興味が無かった私にその漫画の話を楽しそうに何回も、何回も、それこそ内容を覚えてしまう程沢山話してくれた。
と或る(ストーリー)を話してくれた時は、少し感じた既視感に何処か違和感を感じた漫画でもあった。
そして最期にその違和感が何だったのか、漸く理解出来た漫画でもあった。




『何故、その世界に行くのが私なんだ。子供達では駄目なのか?私なんかよりもあの子達の方が──』

肆→←弐



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黒龍(プロフ) - 様々なオタクさん» もしやSAOの……?() (2021年6月12日 19時) (レス) id: b77228759e (このIDを非表示/違反報告)
様々なオタク - ヴァッサーゴ?!ヴァサゴ?!POH?! (2021年6月12日 18時) (レス) id: eccd7c5314 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - 布教する猫さん» コメントありがとうございます!更新に関しましては不定期になりますが頑張ります^^ (2021年1月16日 11時) (レス) id: b77228759e (このIDを非表示/違反報告)
布教する猫(プロフ) - すっっごく面白いです!!更新頑張って下さい!!(* ´ ▽ ` *) (2021年1月14日 20時) (レス) id: 0899319726 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - じしゃくさん» コメントありがとうございます!そして、そこに気付いて頂けて凄く嬉しいです……!! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2018年5月21日 1時

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