二度目の人生はあの子が愛した世界で【文豪ストレイドッグス】

参拾参 ページ39

｢馬鹿ッ！手前黙ってろコラ！！｣




しゃがんだまま太宰さんに必死に訴え掛けていたがその努力も虚しく残念な事に羊の構成員の二人は中也さんを見つけてしまった。




｢中也やっと見つけた、探したぞ｣




駆け寄って来た二人を見て諦めたのかフードを取り、遊戯機械の前に置かれていた椅子に座った。




｢お、おう、お前等無事だったか｣


｢晶や省吾達がポートマフィアに攫われた、早く奴等のアジトに殴り込んで痛い目見せてやろうぜ、何時もみたいにさ！｣


｢心配すんな、その件は対処中だ｣


｢対処中？｣


｢そう、対処中。それより君達が調べた荒覇吐の噂について教えてよ。何か判った？｣




意外にも答えたのは太宰さんだった。
勿論太宰さんを見た事が無い彼等は不思議そうに太宰さんと中也さんを交互に見ている。




｢誰だ此奴｣


｢入団希望者？｣


｢まあそんなとこだ。悪いが此奴の質問に答えてやってくれ、頼む｣




未だ疑問に思っているが話してくれるらしい。




｢まあ善いけど。俺達が調べた限りで云うと黒炎やポートマフィアの先代を見たって噂はここ一週間で爆発的に増えてる｣


｢確認出来る一番古い噂は？｣


｢多分八年前だ。大戦末期、擂鉢街を作ったあの巨大爆発。荒覇吐が直接出した被害は之以前は無い｣


｢矢張りそういう事か｣


｢此奴本当に羊の新入り？｣


｢そんな事より仲間の奪還計画を立てようぜ、攫われたのは川の向こうの工場通りだ｣


｢一寸待て、川の向こうに行ったのか！？又酒を盗みに行ったのかよ？あんなポートマフィアの拠点の近くに……抗争の真っ最中だろ、誘拐してくれって云ってる様なモンじゃねえか！｣


｢怒鳴らないでよ！｣


｢防衛主義の掟は守ってるだろ、それに善い機会じゃないか。羊に手を出せば百倍返しだろ？中也は何時も云ってるじゃないか、他人とは違う手札を持っている人間はその責任を果たすべきだって。異能力という手札を持つ責任を果たしてくれ｣


｢面白い！実に面白いよ君達。この中で一番強い力を持つ彼がまるで狼に睨まれた羊だ。どうやら組織の頂点に立つって云うのは想像よりも大変なものらしい｣


｢手前｣




太宰さんの言葉に中也さんは怒り爆発寸前だ。
然し乍ら太宰さんは相変わらずの胡散臭い笑みを貼り付けている。




｢でも彼を連れて行くのは無理だよォ、ポートマフィアの命令で仕事の最中だからね｣


｢おい！｣


｢そんな事ある訳無いじゃない、そうでしょ中也？｣

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