拾漆 ページ22
『如何なさいましたか?』
「少し帰りが遅いと思ったので心配して来ました」
遅かったと云われても此処に来て未だ十分程度なのだが……之は遅い範囲に入るのか?
何時もと雰囲気が違う蘭堂さんを見て首を傾げていると彼は鋭い視線を葬儀屋に向けたまま先程よりも引き寄せている腕に力が入った。
葬儀屋も葬儀屋で何やら悲鳴に近い声を出した後、犬の如く唸っていた。
その姿を見ていると前世で猫探しをしていた時に、その猫と一触即発しかけていた大型犬を思い出す。
「ちょっとちょっと君さァ、何菫ちゃんを抱きしめてんの?殺って欲しいの?殺っちゃうよ??ん???取り敢えず菫ちゃんから手離せよコラ」
「彼女の名は菫じゃ無い、Aだ。そして私の名は先刻云った通り蘭堂であり、それすらも君は覚えられないのか?……却説、遺体はもう渡しましたし行きましょう、Aさん」
『え、あの、ちょっ……』
私の了承の言葉も得ず、そして後ろで未だ何か叫んでいる葬儀屋の言葉にも耳を貸さずに蘭堂さんは歩き出した。
歩き出すのは百歩譲って_否、普通に善いとして何故か軽々と横抱きされている此の状況は一体何だ、何なんだ、私は何かしてしまったのか。
通り過ぎる同僚達も私を横抱きにしている蘭堂さんを二度_四度見する程だ。
酷い者なら未知生物を見る様な目で此方を見て固まっていた。
しかし、あの優しい蘭堂さんが怒るとは矢張り余程の事を私は仕出かしてしまったのでは……?
その証拠に何回か呼んでいるのにも関わらず無視+無言である。
昇降機に乗り、器用に最上階の釦を押してから数秒後彼は溜息を吐き私を見た。
その目は先刻見せた鋭い視線が嘘の様に優しい目で此方を見ていた。
話し掛けるなら今しかないだろう。
『あ、あの、蘭堂さん?何か御気に触る様な事致しましたか?後、私は重いですし徐々降ろして頂けると嬉しいのですが……』
「……Aさんはもう少し__いえ、何でもありません。重くないですし、もう少し此の儘で居させて下さい」
どうやら自己解決したらしい(?)
怒ってないのなら善いのだが。若しや之が怒られ損と云う奴なのか?後、降ろしてはくれないらしい。
最上階に着いたと知らせる昇降機の音と共に扉が開き、私を抱いたまま目的地であろう部屋の扉へと向かった。確かあの部屋は資料室だったか?
「首領、入ります」
『え、待って下さい。此の儘!?』
降ろしてくれと云う前に彼は入ってしまった。
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黒龍(プロフ) - 様々なオタクさん» もしやSAOの……?() (2021年6月12日 19時) (レス) id: b77228759e (このIDを非表示/違反報告)
様々なオタク - ヴァッサーゴ?!ヴァサゴ?!POH?! (2021年6月12日 18時) (レス) id: eccd7c5314 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - 布教する猫さん» コメントありがとうございます!更新に関しましては不定期になりますが頑張ります^^ (2021年1月16日 11時) (レス) id: b77228759e (このIDを非表示/違反報告)
布教する猫(プロフ) - すっっごく面白いです!!更新頑張って下さい!!(* ´ ▽ ` *) (2021年1月14日 20時) (レス) id: 0899319726 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - じしゃくさん» コメントありがとうございます!そして、そこに気付いて頂けて凄く嬉しいです……!! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2018年5月21日 1時