90minutes -TH-

戯れ-YOU- ページ32

■YOUside



ﾕﾝｷﾞ｢虚ろげなのはさっきの男が原因？｣


『え？』



ホテルの下の洒落たバーで
“なんか食おうぜ”と料理とワインを注文し
グラスを傾けながらしれっと話題を振る



ﾕﾝｷﾞ｢違った？｣


『･････』



ここは否定しなきゃいけないんだろうけど
“違う”と言ったところで
この人は嘘を見抜くだろうと思うと
否定も肯定も出来なかった



ﾕﾝｷﾞ｢Aって言うんだな、お前｣



ワインを口に含みテイスティングするように
その固有名詞を舌で一緒に味わう



『今はアンナですから』


ﾕﾝｷﾞ｢知ってる｣



トラブルを懸念して客に
自分の本名や連絡先を明かすことは
ルール上禁止されてるんだけど
不思議とユンギさんには気張らない自分がいる



ﾕﾝｷﾞ｢そもそも俺は
　“アンナ”を抱きたくて
　お前を指名してるわけだし｣



多分彼が心得ある大人だからだろう




ﾕﾝｷﾞ｢さっきの男は“A”の彼氏？｣


『･･･ユンギさん？』



てっきり興味無いのかと思えば
気まぐれにそんな事を聞いてくる



ﾕﾝｷﾞ｢アンナから見た
　“A”の話を聞かせてよ･･･
　その話を今日の肴にさせてもらうわ｣



ふっと浮かぶ笑みには夜の戯れ



『いいえ、彼は彼女の
　彼氏なんかじゃありませんよ』



私もそれに乗ってまるで他人事のように語る



ﾕﾝｷﾞ｢へぇ、ますます興味深いじゃん｣



今私はAじゃなくてアンナだから



『彼女の話なんてなんの面白味もありませんよ
　きっとユンギさん‥スグ飽きちゃう』


ﾕﾝｷﾞ｢いいじゃん聞かせてみ？
　･･･憐れな女の話をさ

　俺儚げな女嫌いじゃないんだよね｣



“キング”のご機嫌を取るのも役目



『ユンギさん変わってますよね』


ﾕﾝｷﾞ｢そう？
　まぁそう言われんの悪い気しねーな｣



私もこの人が嫌いじゃない




優しさで私にそんな話をさせたのか



『目隠し･･･ですか？』


ﾕﾝｷﾞ｢そう、お前は黙って
　俺のされるがままになってな｣



自分が楽しむためなのかはわからないけど



ﾕﾝｷﾞ｢好きな男を思い浮かべてろ
　絶対よくしてやるから｣



今宵の戯れは私にとって救いだった



ﾕﾝｷﾞ｢そうゆう女を抱くのも悪くない｣



ワインの酔いと見えない視界で
体の全ての感覚が支配される



何も考えられなくなる



ただ瞼の裏に浮かび上がるのは
私を愛おしそうに見つめるテヒョンの顔

ただの女-YOU-→←確信

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す