【ゼルダBotW】白い記憶と永遠の命 (ページ8)

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厄災ページ8

［A］

「けっこん…かぁ」

リンクからのプロポーズを受けてから10日ほどたった。
未だに嬉しさのあまりリンクのあの言葉を思い出しては一人でにやにやする。

「楽しみだなあ…」
窓際の椅子に腰掛けながら、空を見上げる。
雲ひとつない、晴れだった。

「…！？」

突然、ぐらぐらと地面が揺れ始めた。
戸棚の食器が落ち、割れる音が次々と耳に入る。
危険を察知した私は、頭を守りながら外へ出てみた。

「なにこれ…」
ハイラル城を覆う邪悪なオーラとあちこちで上がる炎。人々の叫び声と共に、「逃げろ！」という声が聞こえた。
何が何だかわからないまま、人々の流れに合わせ、逃げようとした。
「あっ！」
無くしちゃいけない大事なものが家に置いてある。今度は流れに逆らって、家へ戻った。
「よし」
幼い頃からずっと大切にしてきたポンチョ。
さらりと羽織ると、再び外へ出る。
少し遠くにいる若い男の人を追いかけるようにお気に入りのショートブーツで駆け出した。

まだ、心のどこかで余裕をかましていた。
しかし、その余裕も長くは続かなかった。

何かの赤いレーザーが自分の頭に焦点を合わせている。
「…えっ…？」
全身から血の気が引いていく。冷や汗がどっと吹き出し、恐怖のあまり足を止めてしまった。男の人はもう見えなくなっていた。

逃げなきゃ。死ぬ。
そんなことはわかっている。なのに、身体が動かない。

厄災だ。
昔、そんな話をリンクから聞いたことがある。それは、今目の前にある『ガーディアン』で思い出した。
時間が止まっているようだった。ガーディアンは私に向けたレーザーの発射準備を着々と進めているというのに。

「…………助けて、リンク…」
小さく呟いた。まだ身体は動かない。
ぽろぽろと涙が溢れてくる。

ゆっくりと瞼を閉じる。
最後、視界が狭い中で一筋の閃光を見た直後に全身に強い痛みを感じ、そのまま後ろに倒れていった。

足元がふらつく。
しかし、何者かの支えでなんとか姿勢を保てている。

「痛いもしれないけど、ちょっとだけ待って」

はっきりと聞き取ることができたが、意識がだんだん薄れていく。

全身の痛みは、知らないあいだに無くなっていた。感覚が麻痺したのが先か、意識が無くなったのが先かは、覚えていない。