朝 ページ13
[ゼルダ]
朝日がちょうど昇り始めた頃に目が覚めた。
拍動は大きく、速い。
まだ、胸騒ぎがする。
『Aが、時の扉を開く鍵です』
あのリンクの言葉からは、あの頃のことを知っている様には思えなかった。
ゆっくりと起き上がり、あたりを見回す。
階段を降りた先のカーペットの上で、薄い布を被って2人は寝ている。風邪を引かない様にと、さっきまで自分が被っていた布団を起こさないように2人に掛け、外に出た。
この頃暖かくなってきたというものの、まだ明け方は風が冷たかった。家の前の焚き火が風に揺られて火の粉を飛ばしている。
ゆっくり、まだ皆んなが寝静まっている村を1人歩き出した。
『A』というのは100年前リンクから聞いた彼の許嫁の名前だ。
結婚式を目前に控えていた。もし今家で寝ている彼女が100年前のその方なら、Aはその頃のことは覚えてらっしゃるのかしら。もし覚えていなかったとしたら…
Aはあの頃のリンクから聞いた話だと、とても活発な子らしい。長い間眠りについてしまうと、あんなにも性格が変わってしまうものなのでしょうか?
胸がぐっと押し潰される感覚だった。
帰ったらAに色々聞いてみようと思う。
長い坂を登ると、ハテノ古代研究所が見えた。
奥の海は朝日に照らされて綺麗に輝いている。
「失礼します…」
こんな明け方に迷惑極まりないのは承知の上だ。
中に入ると、プルアさんが机に伏せて寝ている。机上にはガーディアンの研究資料が散らばっていた。
「すごい…こんなにたくさん」
つい、呟いてしまった。昔の研究者気分でいたころが思い出される。
「ん〜、誰〜?」
プルアさんを起こしてしまった!
「あれ、ゼルダ様!?」
さっきまでの眠そうな目から一変し、点になっている。
「す、すみません!こんな朝早くに勝手にお邪魔して…!」
「珍しいね、何かあったんでしょー?」
流石プルアさん、勘が鋭い。
「実は…」
昨日のことを全てプルアさんに話した。
プルアさんも100年前リンクが結婚式を挙げることを知っていた人の1人である。
当時、王女の近衛騎士の結婚は、一部の王族に反対されていた。王に忠誠を誓う騎士の道に反する、と。お父様も最初は反対していたが、私やプルアさん、英傑のみんなで説得してなんとか了承してもらえた。
きっとリンク本人は知らないけど…。
「フムフム…。お昼過ぎにそっちに行くヨ」
ありがとうございますと一礼して、研究所を後にした。
まだ村の人達の影はなかった。
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作者名:みはね | 作成日時:2017年8月27日 8時