帰郷 ページ12
[ブレリン]
ハテノ村に着いた頃には、すっかり日が昇っていた。入口の門からは、村の人々が各々の仕事に励んでいるのが見える。
しかし、その人たちは、好奇の目でこちらを見ていた。
それも無理ない。馬に乗る俺の後ろには、誰も見たことも無いくらい白い髪を持った彼女が眠っているのだ。疲れていたのだろうか、村に向かう途中で眠ってしまっていた。…目覚めて間もないのに。
自宅に着くと、いつも見ていた人達がいなくなっていたのに気づいた。サクラダさんとカツラダさんだ。そういえば以前旅に出ると聞いたことがある。
最後に挨拶しておきたかったなぁ。
彼女を連れてゼルダ様の待つ家の中へ入った。
「ただ今戻りました」
「おかえりなさい。リンク」
ゼルダ様は掃除をされていた。
「お手を煩わせてしまって申し訳ありません」
「いえ、自分でできることはしておきたいので。
それよりその方が…」
彼女は俺の背中に隠れて様子を伺っていた。
「ええ、彼女が、Aが、時の扉を開く鍵です」
「えっ…!A…!」
俺が名前を告げた途端、ゼルダ様は驚き呟いた。
「100年前お会いしたことがありましたか?」
「い、いえ…。すみません。」
何か心当たりがあるのだろうか。少し引っかかるが、これ以上は聞かないことにした。
「取り敢えず、立ったままでも何なので、座ってお茶にしましょう!」
ゼルダ様に頂いたお菓子を食べつつ、Aを見つけた時のことを話した。
その間もAは俯いたまま、言葉を発しなかった。
「あっ、ご紹介が遅れてすみません、A、この方はこのハイラル王国の姫、ゼルダ様」
「よろしくお願いしますね」
Aはゆっくりと顔を上げると、小さく「よろしくお願いします」と呟いた。
人見知りなんだろうな、まあ、そのうち慣れてくれるだろう。
その日の夜は3人分の寝床が無いため、俺とAが床で寝ることにした。ゼルダ様は申し訳なさそうにしていたが、風邪を引かれては困ると半ば強引にベッドに横になってもらった。
仰向けになると窓から月明かりが差し込んでいるのが見えた。
Aは隣で早くも寝息を立てていた。眠ってばかりの彼女とは裏腹に、俺は寝付けず窓の外を眺めていた。
本当にAが時の扉を開く鍵なんだろうか、そんなことを1人悶々と考えていた。Aに事の次第を話した時もきょとんとした顔だったし…。
あれやこれやと考えている内に、旅の疲れも相まっていつのまにか眠っていた。
8人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みはね | 作成日時:2017年8月27日 8時