捕まえて。離さないで。２【道枝駿佑】

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朔夜さんの化学の授業




「〜〜であるから、ここの構造式は〜」





息できてるかな、

息が詰まりそうだ。





「せんせー！」



声を上げたのはクラスでも中心にいる
女の子。




「なんですか？」




「彼女とかいるんですか？」




「ちょ、授業と関係ない事は後で、」




「照れてる！可愛い！！」



「授業中ですよ！」






その子に便乗して、いろんな子が朔夜さんを質問攻めにし始めた。





「彼女いるかだけでも教えてくださいよ〜！」



「･･･今はいないです」




諦めた。




「まじで！イケメンなのに！！

･･･もしかして、元カノ引きづってるとか？！」




「･･･っ、」




「図星だ！先生照れてて可愛い〜」




「元カノとかではないですけど、

すごく好きだった人が突然いなくなってしまった事が、未だに忘れられない･･･というか。」





「一途〜！」





･･･それって、私じゃないよね？

どうか私じゃないほかの人でありますように。





「ちなみに！その好きだった人の名前は！」



「Aちゃんって子でした」



「わ、A！同じ名前じゃん(笑)

年齢は全然違うけどね。」



「Aちゃん･･･？」






その言葉と共に、朔夜さんの目が
私を捕らえた。





朔夜さんの目は、揺れていた。






･･･やっぱり、私のことだったんだ。









「おいおい、一ノ瀬、授業脱線してるぞー」



「あっはい！すみません！」





授業見守りの先生によって
外れた視線。






どうしてなの、どうして。




私に平穏は似合わないの？

特別を求めてるんじゃない。

人並みに幸せに生きたいだけなのに。






「･･･もう、いやだ、」


誰にも聞こえない小さな声で

呟いた。






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