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Watanabe side
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「絶対嫌だよ」
「みんなはなんでそんな普通なわけ？今までの俺らの数年が全部無駄だったって言われてるようなもんじゃん」
「葉歌Aをセンター？冗談じゃないよ。俺は、葉歌のバックになるぐらいなら辞めた方がマシだ」
「なんであの人に頼らなきゃいけないわけ？」
「とにかく、俺は反対する。入ることが既成事実化されてるならもうしょうがないけど、プライベートと仕事は分けて対応するから」
これは夢だ。
過去の過ちを再び見ているだけだ。
そう分かっていても、夢の中の自分は口が止まらない。
記憶にはないAを否定する言葉ばかりを並べて、通りかかったAが酷くショックを受けた顔をして。
嫌だ
その先は見たくない。
泣きそうな顔をしているAに、夢の中の俺はあろうことかまだまだ罵声を浴びせる。
殴り掛かりそうな勢いなのを必死でメンバーが止める。
そんなことをしたくないって思っているのに、夢の中の自分を制御することは出来ない。
あの時、うたが加入することが決まった時、冷たい態度を取っていたのは俺だけだった。
圧倒的に分が悪い、そして俺が悪い状況の中でも数週間は最低限の会話しかしない日々が続いた。
きっと、あの時の彼もこんな風に泣きそうな表情で俺を見ていたのかもしれない。
嫌だと思いながらも話しかけてくれていたのかもしれない。
夢の終着点までちゃんと覚えている。この夢を何度となく見たんだから。
"お前なんて、ジャニーズにいなきゃよかったんだよ！！！目障りなんだよ！！！"
とうたに叫ぶ。
一筋の涙を溢したうたは、決意を固めたかのような瞳で俺を見ると、ベランダのない窓から軽い身のこなしで飛び降りる。
そこで夢は終わりだ。
飛び起きて、全身に汗をかいていることに気付いて大抵シャワーを浴びる。
彼の努力を頑なに認めようとしなかった罪だ。
これはきっと、贖罪の夢だ。
だからこそ、うたには言わないといけないことがある。
「あの時はゴメン」
『…あの時って？』
電話の向こうで、うたはからかうような声で話を逸らした。
それでも、言わなくちゃ。
「うたが加入した時、俺だけ拒否して、酷いこと言った」
『もう気にしてないよ』
「もうってことは、あの時は気にしてたんだよな」
『……まぁ、そういうことだね』
「今なら、うたの実力も努力も全部知ってる。だから、今度は俺がうたを守る壁になるよ」
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作者名：Radu | 作成日時：2021年8月9日 22時
