10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ4)

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Watanabe side

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「もう食べねぇの？」

『……うん、』

「腹減ってなかった？」

『…そういう訳でもない、かも』

「ほんと忙しくなると飯が入んなくなるよな」

『翔太くんも同じじゃないですか？元々小食だし』

「それでもお前よりは食べたから」

どう考えても子供サイズな茶碗に少なく盛られたご飯と、おかずを少し食べたぐらいで結局箸を置いてしまった。

忙しくなると食事が疎かになってその影響で時間があったとしても量を食べられなくなる、その結果として大抵貧血でぶっ倒れるっていうループを何度したことか。

それでも摂食障害をなんとか克服したAに強制的に食べさせるようなことはしたくないってメンバー全員が思ってるから、結局Aが苦しむところをまた見ることになるだけ。

『………いつも、ゴメンね』

「何が？」

『……なんか、気遣わせてるな、って』

「別にいいんじゃね？俺らは好きでAの子守りやってるんだし」

『…子守りって、ラウと一緒じゃん』

「俺にとってはラウもうたも一緒だよ。いつも一生懸命だし頑張りすぎるし放ってたらどこか行くし」

『どこか行くはラウとめめでしょ』

「お前もそうだろ。どっか行ったかと思えば勝手にぐしゃぐしゃになって帰って来るし」

心当たりがあったのか、Aは俯いて黙り込んでしまった。

ちょっと箸を伸ばして肉じゃがを取ろうとしたけどそれもやめた。

怒ることも泣くことも何もかもを放棄していたあの頃と比べれば、随分分かりやすい表情をしてくれるようになった。

「茶碗洗っておくから、仕事の続きやったら？」

『…あ、うん。でも、』

「残ったおかずはラップをかけて置いといて、だろ？」

『なんか、今、翔太くんがめちゃくちゃ頼れそうに見えた』

「なにそれ、いつもは頼れないってこと？」

『そうじゃなくて！』

「分かった分かった。どうせ今日だってそんな疲れた顔してんのに徹夜なんでしょ？」

『……終わんなければ、』

「ほんと忙しい奴だよな。マネージャーになんとか言って仕事減らしてもらえないの？」

『まぁでもあるだけマシだし』

「そうだよな」

"先にお風呂入ってきます" と言い残したAはゆったりとした足取りで階段を登って行った。

いくら料理が出来なくても茶碗を洗うことぐらいは出来るし、と意地を張ったものの危うく茶碗を落として割りそうになったのはAに内緒の話。