10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ29)

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Meguro side

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目黒「え？」

『どうしたの、目黒？今日疲れてる？』

「いや、全然」

『あっ、でも疲れてるならまた今度でも』

「行く、絶対行くからちょっと待ってて」

『あー！ちょっと走ると危ないよ！！』

ファッション雑誌の撮影中、スタジオが一瞬だけざわざわした。

なにかトラブルがあったのかと思ったけど、その後も撮影が普通に続いたから忘れていた。

そしたらAくんが見学に来ていたらしい。ドラマの撮影でスケジュールがギチギチになっている人がわざわざここまで来てくれただなんて、それだけでも嬉しいのに。

『この後って仕事ある？』

「無いよ」

『飲みに行かない？』

「え？」

『だから、もしよかったら飲みに行きませんかって』

「えぇ？」

Aくんが待っているからと急いだせいで足の小指をソファにぶつけ、雄叫びは廊下にいたAくんにまで聞こえたらしい。

兎にも角にも、この忙しい時期に飲みに誘われるということは何か大事な話があるに違いない。

それぐらい俺にだって分かる。でも、舘さんとかふっかさんとかじゃなくて俺を選んだ理由だけが分からない。

「本当に俺で良かったの？」

『どういう意味？』

「ほら、相談とかだったらもっと適任がいるかなって」

『適任もなにも無いよ。それに、目黒の演技好きだからね』

目黒くん、といつまでも呼ばれるのが嫌でいつからか呼び捨てで呼んでくれないと無視するというルールを勝手に作った。

会話が円滑に進まないのが面倒になったのか、最近は目黒呼びが板に付いて来た。

そんな彼は、翌日に仕事があるというのに一杯目から随分アルコール濃度の強いお酒を呷っている。

「……ほんとに？」

『嘘なんか言わないよ。舞台でもドラマでも目黒の演技見てると心洗われるんだよね、この人は本気で演技の仕事が好きなんだなって。何処かに置いてきた感情を取り戻せ！って言われてるみたいでね』

「そうなんだ」

なんとなく、ここで俺はAくんの演技が好きだよって言う雰囲気じゃないなって思った。というだけの話だけど、次の彼の言葉が出てきたのは無言を貫いたおかげだと思っている。

それは知らなかった話で、知りたくなかった話。