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『これを、良かったら受取って欲しいんだ』


「待って、これ、箱から考えて指輪だよね?」


『……ねぇ、なんでそういうこと言うの。もう!ムードっていうのものが台無しだよ!』


「私さ、ずっと疑問に思ってたんだけど、こういう婚約指輪をサプライズ的な感じで渡すのって、サイズとかその人の趣味とか、好きな色とか分かってるのかなって思わない?」


『開ける前にそれを言われるのは、ちょっとハードルが高いかな』


「ま、開けてみるね」


『大目に見てね』



フレンチレストランの一角のテーブル席

最後のデザートが運ばれてくる直前で "大樹" が "梢" に小さな箱を渡す。

すぐに婚約指輪だと気が付いた "梢" はいつものように軽口を叩く。

"大樹" は気に入ってもらえるか心配そうな表情



『どう、でしょうか』


「好きだよ、これ、欲しいなって思ってたんだよね、そう、」


『婚約指輪って言っても日常的に使えるのがいいなって思ってたし、前に、見せてもらったよね、これオシャレだと思わない?って』


「……まだ覚えててくれたんだ」


『ちゃんと、忘れません。それで、前後しちゃったんだけど、僕と、結婚して頂けませんか?』


「………しません、って言ったら?」


『もうね、そんなの大泣きだよ。家に帰るまで、帰ってからも寝られないほど大泣き、もう仕事も辞めて実家に帰ろうかな。それでおじいちゃんになるまで実家の犬の散歩でもして生きるかも』


「ふふっ、やめてよ、そんな大樹が想像できるから余計怖い!」


『あの、お返事の方は、』


「勿論、受け取らせて頂きます。あのね、私さ、自分で思っている以上に君のこと好きなんだよね」


『うん、知ってる』


「病院でずぶ濡れになって泣いてた時はさ、ただの弟みたいな人って思ってたけど、包容力とか?優しいところとか、弟なんかじゃなくて、むしろ私のずっと先にいる人だった」


『そんなことないよ』


「だからね、今でも尊敬してるの。心の底から君みたいな素敵な人が世界に増えればいいって思ってる。そんな君と、結婚できるだなんて、私幸せ者だなぁって」


『泣いてんじゃん』


「ここで泣かない方が変なんだって!」





はいカット!!!


本日は終了となります!


お疲れ様でした!!!





【撮影開始から21日目】

牧村大樹役:葉歌A

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作者名:Radu | 作成日時:2021年8月9日 22時

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