10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ20)

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Iwamoto side

『おはよ、岩本くん』

あの台本を盗み見したせいで、おかしな夢を見た。

目が覚めた時、いつもの自分の部屋の天井が見えないことに異常な焦りを覚える。

けど、隣のベッドにとろんとした目のうたがいることに気付いて、ようやく思い出した。

『夜中にふと目が覚めたらさ、岩本くんがそこのイスに座って寝てるからビックリしちゃった』

「……待って、覚えてないんだけど」

『僕一人じゃ無理そうだったから、看護師さんにも手伝ってもらってそこのベッドに、ほら、寝心地どうだった？』

「あんまり良くないかも」

『アハハ！だよね』

「ちょっとは元気になったみたいだな」

『少なくとも今日のリハの見学は出来ると思います、岩本先生』

「まずは退院できるかでしょ？」

『それはもう頭下げるしかないね』

「ドラマの撮影いつから始まるの？」

『んー、いつだったかな、分かんね』

珍しく、本当に珍しくうたがほんの少し汚い言葉を使った。

別に他の人なら普通なんだけど、品行方正を携えて生きるうたにしては本当に珍しい。

それに自分でも気付いたのか、恥ずかしそうに八重歯を見せて笑った。

『っていうか、台本見ましたよね？』

「あーゴメン、読んだわ」

『どうでした？』

「………正直に言うと、色々思い出した、昔のこととか」

『そうなんだよね、まぁ昔のことがあったから使ってもらえたのかなとか思ったら、逆にね、事務所に弱み掴まれてるのも悪くないかなって』

「あんまり、気、詰めすぎんなよ？何よりも、うたの演技力とか知名度とかが優先されたに決まってんじゃん」

『でもあれかも、減量しなきゃーって思ってたけど風邪引いたおかげで全然食べられないし、ちょうどよかったかも』

そう言って自嘲的な笑みを浮かべるなんて、やっぱり珍しいこと続きだ。

朝食を運んできた看護師さんにお礼を言って、一足先に病院を後にする。

うたが合流できるかは分からないけど、俺の裁量には委ねられてないし。