10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ19)

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Iwamoto side

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巡回中の看護師さんに無理を言って、うたの病室に入れてもらった。

芸能人が入院します、って感じの広くて殺風景な部屋。

その真ん中で顔を真っ赤にして眠っていた。

点滴を入れてもなかなか熱が下がらないらしい。

起きている間は咳が酷くて、喘息まで併発しているらしい。

ようやくさっき眠れたところだけど、すぐに起きちゃって今夜はよく眠れないかもしれないらしい。

もしも希望するならば、隣にベッドを持ってくるから泊ってもいいということ。

あんまりにもうたが明日のリハには合流したいと希望するのに、体調が戻らないからお医者さんも困っていたんだとか。

病室に入れてもらった時には仕方ないですよ、って感じだったのにうたの様子が数時間前と何ら変わりないことに看護師さんも焦りを覚えたみたいだった。

『ん、っ、』

「あーゴメン、起こしちゃったかな」

『………ひ、か、る、くんっ、』

「そうだよ。なんかさっきより辛そうになっちゃったね」

1時間前に電話をした時はちゃんと話が出来ていたけれど、その後すぐに咳が酷くなって喘息の発作を起こしたらしく、今は背中を少し起こして苦しそうに呼吸をしている。

充血した目からほろんと涙が1つ落ちて、うたの手を握っていた俺の手のひらにポツリと落ちた。

その水滴さえも熱を持っているように感じる。

「寝れそう？」

『……ね、ない、と、っはぁ、あした、いけない、』

「無理しなくていいんだよ。本番はまだ先だし、振りもアクロも完璧なんだから休みな、ね？」

かなり速いスピードで酸素マスクを曇らせる彼は、そう一言喋ると静かに眠りに就いた。

苦しそうな表情は変わらないけれど、喉の奥がヒューヒュー鳴る音の切れ間に寝息が聞こえてきたことで少し安心できる。

外から冷たい風が少し吹いて来て、窓の傍に置かれた分厚い台本のページが揺れた。

「ゴメン、勝手に見ます」と既に眠っているうたに小さく声をかけて、丁寧に名前が書かれたそれを手に取った。

最初のページをめくって "葉歌A" という名前が一番先頭に書かれているのを見ると、初めて見る訳じゃないけどやっぱり背中が震えた。

綺麗な字で書きこまれた文字も、時間が無かったのか乱雑に書かれた文字も、全部が彼の努力を証明している。

そして、ページをめくるたびに引き込まれるストーリーはあっという間に俺の瞳を涙で一杯にした。