10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ16)

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終焉は、ここに。　ページ16

Iwamoto side

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ケホン、と彼が1つ咳を吐いた時、誰もがその音の出所を振り返って見た。

全員の視線を浴びたうたは恥ずかしそうに目を細める。

最近のうたは風邪気味らしい。

冬の寒さに体が付いて行けず、沢山上着を着て仕事に出かけても毎年風邪を引くのは避けられないんだとか。

小学生の頃は季節が変わる度に体調を崩していたせいで、遠足に行けずに泣いた思い出ばかりが残っているって前に言ってた気がする。

佐久間「うた、だいじょーぶ？」

『んー、たぶん』

渡辺「なんだその返事」

『なんか、頭がぽわぽわしてる』

ラウ「それ怖いよ！熱あるんじゃない？」

『えーうそ、やだな』

2019年の冬、YTFFの準備だなんだと忙しい時期でも、うたは多くの仕事を抱えていた。

最近の彼の自論に依れば、彼は "使いやすい役者" らしい。

ジャニーズなのにその扱いなのか？って思ったけど、今までどんな役も引き受けてきた実績があるからかこんなに有名になっても端役でのオファーが来るっていう嬉しいことだとか。

去年は1話で殺されてしまう役 (後に全ての事件の首謀者で、彼の息のかかった仲間たちが事件を引き起こすという極悪人だった) を演じたこともあったし。

その時もうたは普通の顔してその仕事を引き受け、それが放送されてもファンの人たちは普通の気分で見ていた (1話で殺されても回想シーンで出てくる喜びと、黒幕である証拠が出てくるにつれ襲い掛かる不安でごちゃまぜになっていたのは正直可哀想だと思ったけど)

ファンの人は "うたくんのシーンがこんなに少ないだなんて！" と怒ることもなければ、"うたくんにこんな役をやらせるな！" と罵ることもなかった。

類は友を呼ぶ、という言葉らしく、人間として出来上がった葉歌Aという人間の傍にいる人たちは完璧な精神を持っているのだ。

そんな彼の今度の仕事は、とあるテレビ局の開局周年記念ドラマの主役らしい。

要するに、超ビッグなお役目！

その話を聞いた俺らの方がビビったのに、本人は至って冷静で、心境としては特にいつもと変わらないらしい。

ただ、一刻の暇も与えない激務のせいでかなりやられている様子だ。

役作りのための減量が季節の変わり目に引いた風邪を長引かせているみたい。