10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ14)

今日:1 hit、昨日:11 hit、合計:95,226 hit

・ページ14

Raul side

・

「もう、帰るね」

『そうだね、ごめん、家までは送らせて』

「……自分勝手だよ、うたくんから、そんな意識の低いことを聞かされるだなんて思ってなかった」

今思い返せば、僕はうたくんに対して最低なことを言った。

うたくんが深い思慮なしにこういうことを言う人じゃないのに、僕はうたくんを頭から否定してしまった。

うたくんが家まで送ってくれる車の中で、僕たちは終始無言だった。

自分の過ちには早くに気付いていたけど謝ることさえできなかった。

『じゃあね。今日はありがとう。僕ももう一回ちゃんと考える、失望させるようなこと言ってごめん』

「……じゃ、また明日」

ベッドに入って悶々と考えた。

うたくんが激務の日々を送っていることも、リハとかレッスンの度にキツそうにしていることも知っている。

それなのにあんなことを言ってしまうだなんて、今頃うたくんは何を思ってるんだろう。

なかなか眠れずに深夜が近くなって来た頃、ふっかさんからLINEが届いた。

"もう寝るところだったら明日返事ちょうだい！さっき葵からLINEが来て、ラウールとメシに行くって言ってたうたが帰ってくるなり車で泣いてたんだって。なんか知ってる？葵はカンカンに怒ってて次現場に遊びに来たらラウールをぶん殴るとか言ってるからこえーんだけど"

"僕が完全に言いすぎちゃって、うたくんを傷つけました。ダブルセンターを解消したいって話だったんですけど、意識が低いとか、年下だから説得できるんだろとか、色々最低なこと言っちゃいました。"

"あーあ、その話かぁ。俺も3日前ぐらいに聞いたけど、いいよって軽く返事しちゃったんだよね"

"え？てっきり、ふっかさんはダメって言ったんだと思ってた"

"俺が？ダメとは言わないよ！ただ話聞いてこれはうたにとって結論出てるなって思ったら受け入れるだけ。ラウールが仕事にプライドを持ってるのは分かるけど、うたも同じだと思うよ。ファンの人にもラウールにも失礼になるからってことで決断したんだと思うな"

"僕、最悪だった"

"明日ちゃんと謝ればいいよ。ラウールが理解者になってくれたらうたも心強いと思うし"

翌日、仕事現場で会ったうたくんは僕を見るなり目を背けた。

加入したての、人見知りを発動されていた時みたいな。

けど、その時より結構心にグサッと来たのは事実、僕が悪いのにね。