10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ12)

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Raul side

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Aくんが寂しそうな表情を一瞬だけ見せた。

こんな顔、少なくとも僕の前では見せたことが無かったから心の奥底がざわざわした。

ラウ「彼女さん、今でも会うの？」

『全くだね。どこで何してるのかも分からないし、生きてるのかさえも分かんない』

「………そっか、」

『僕が好きになって告白して付き合ってもらったんだ。別に高校生の恋愛なんてたかが知れてるし、ちょっと大人なドラマに出るようになってあの時の僕の行動は本当に彼氏として適切だったのか分からなくなった』

「それは、デートとかにあんまり行かなかったってこと？」

『そうだね。僕も彼女もあんまり外を好むタイプじゃなかったし、っていうのは言い訳かな。ただ一緒にいる時間はかなり長かったと思うよ』

「…でも、別れちゃったんだ」

『彼女、ずっと隠してたけどお母さんと2人暮らしだったんだ。ある日家に帰ったらそのお母さんさえいなくて、彼女はパニックになった。本当は出て行った旦那さんの居場所が分かって慰謝料とか請求してやる！って意気込んで出かけてただけなんだけどね』

「ええぇ、すごい人だね」

『彼女もすごい人なんだよ。だけど、自分が捨てられたのかもしれないって思ったら人間弱くなるのかもしれないね。僕と彼女はあと一歩で死ぬところだった。命を無駄にしたんだよね』

Aくんの透き通った頬に一筋の涙が落ちる。

それに気付いたAくんは拭って恥ずかしそうに笑ったけど、その涙はしばらく止まらなかった。

ポケットに入れていたクシャクシャになったハンカチを差し出せば "ありがと" と言って受け取った。

『あの時ね、思ったんだ。僕は小さい時に両親に捨てられて、居場所と呼べる場所を求めてこの世界を彷徨ってた。彼女も僕と同じ境遇なんだって思ったら、心のどこかで、安心したし、喜んだんだよね。その罰が当たって彼女には面会謝絶のまま会えなくなってしまったんだろうなって思ってる』

「………もう一回会いたいって思わない？後悔とか、引きずって生きてるAくんがいつか壊れちゃったら嫌だ」

『今はあの人以上に大切な人がいるから、もういいんだ。執着してても向こうはうざいって思うだろうし、きれいさっぱり忘れて今は幸せだよ』

そう言ったAくんの瞳にはもう涙が残っていなかった。

その記憶は、Aくんの中で過去の欠片となりつつあるのかもしれない。