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傑作は、ここに。  ページ2

Watanabe side









『何、食べます?デリバリーとか頼みます?』


渡辺「お前、デリバリー嫌いだろ?」


『……誰情報?』


「ふっかが言ってた。潔癖まではいかないけど素人が運んできた物にはあんまり口を付けたくないって」


『感じ悪そうに見えるからあんまり言わなかったけど、そうなんですよね』


「買いに行く?」


『簡単なのでよければ作りますよ』


「マジ?うたの手料理食えんの?」




長かった外出自粛期間が終わり、少しずつ日常が戻って来た2020年の7月


夏が苦手、といつも言ってるAは今日もあんまり良くない顔色で現場にやって来た。

滝沢歌舞伎が映画になる、そのスケジューリングで一番大変だったのはやっぱりAだった。


9月から始まるドラマの撮影が急ピッチで進んでいた。

おまけに何人ものアーティストの人からの楽曲制作依頼が溜まっている。

仕事を断るだなんて有り得ない、って人だから何もかもを詰め込んでパンク寸前だっていち早く気付いたのはきっと俺だったと思う。




『…翔太くん?』


「いや、なんか手伝うかなって思って」


『あ!でも大丈夫です。翔太くんって包丁とか使うのも危なっかしそうだし』


「勝手なこと言うなって言いたいところだけど、図星だね」


『ですよね。でも美容と一緒でハマったらとことんやりそう』


「料理って面白い?」


『うーん、僕は生活の一部って感じなのであんまり面白いとか考えたことないですね』


「そういえば葵は?」


『友達と勉強会も兼ねて3泊4日の旅行に行ってます』


「だから妙に野菜とか少ないのか。ほんとAって葵がいないと自分のこと後回しになっちゃうよな」


『……翔太くんって、僕と二人きりだと名前で呼びますよね』


「…帰るよ?」


『あー!!!やだやだ!!』




夏でもさっと食べられそうな夕飯を手際よく作っている。

それを俺はテレビを見ながら片目で眺めるだけ。

いくらAが疲れてるとはいえ、手伝えないことはしょうがないからね。

・→←彼、とは。



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作者名:Radu | 作成日時:2021年8月9日 22時

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