10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ46)

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Hauta side

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『僕さ、この仕事辞めようと思うんだ。だから僕のことクビにして』

そう言った時、ジャニーさんは電話の向こう側で何とも言えない声を出した。

それでも、返って来たのは肯定の言葉じゃなかった。

「出来ないよそれは」

『理由も聞かないでそういうこと言わないでよ』

「理由を聞いたって僕の答えは変わらないよ」

『そういうの、偽善者って言うんじゃない？』

「ドラマみたいな言葉を使うね、Aは。でもダメなものはダメ。仕事をお休みするのはいいけど、僕の前からはいなくならないでよ」

一方的に切られた電話の最後の言葉に思わず泣きそうになった。

僕の前からいなくならないで、それは今まさに叫びたかった言葉なのかもしれない。

その言葉を真正面から自分に対して言われたことでほんの少し決意がぐらついた。

深澤「うたはさ、ずっとみんなの先頭で生きてきたじゃん。
偉いよね、まだまだ若いのに、ちゃんとしてて気配り上手で器用に何でも出来て。
でもさ、俺らは知ってるよ？
うたが年相応に傷つきやすくて、それでもしつこいぐらいタフに頑張る人だってこと。
だからさうたがこの仕事投げ出しちゃうだなんて信じられないんだよね。
うたがもう嫌だ！って思うきっかけがあったんだったら、俺は、知りたい」

深澤くんは真っすぐで、僕の汚れた心とは釣り合わない人だった。

何もかも投げ出した末の結果がこれならば、僕は最初から何も持っていなかったんだ。

Fukazawa side

『………深澤くん、これ、聞いてください』

渡されたスマホの画面には留守番電話が表示されていた。

それを耳に押し当てて聞けば、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

微かに漏れたその音を聞くだけでも、うたはギュッと拳を握って俯いてしまう。

俺とか佐久間にも良くしてくれた、ちょっと強面で少し片言の日本語を話すうたのお祖父さんの声だ。

苦しそうな息遣いと共に聞こえてきたのは

"最期の言葉"

自分の死を確信した上での、大切な孫へ向けた重い言葉が録音されていた。

思わず目頭が熱くなるけどここで泣いていいのは自分じゃないって分かってたから必死でこらえる。

うたが仕事を辞めたいという決断をした理由が、今ならはっきり分かる気がする。