10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ45)

今日:13 hit、昨日:41 hit、合計:130,933 hit

・ページ45

Sakuma side

・

確かにそうかもしれない。

本棚にたくさん並べられていた台本が全部片付けられていて、その場所に高校の教科書が乱雑に入れられている。

壁に貼られていた俺らとか仕事現場での写真は全部無くなっていて、その代わりに葵の学校からのお知らせのプリントが1枚だけ寂しそうに貼られている。

まるで、今までのキャリアを全部捨ててしまったかのような。

まるで、違う自分としての道を歩き出そうとしているかのような。

とりあえずジャニーさんと話をしてくると言っていたマネージャーさんとの電話を切って、部屋を見回せば嫌な予感ばっかりが頭をよぎる。

『佐久間くん、と、深澤くん』

深澤「お！起きた？」

『ごめんなさい、さっきは、取り乱した、気がする』

深澤「気にすんなって」

佐久間「うた、事務所やめんの？」

深澤「佐久間、いきなりそれは無いだろ」

単刀直入にそう聞けば、うたは困ったような表情を浮かべて軽く笑った。

でもその目の奥は笑っていなかった。

『………やめ、ると思います』

佐久間「と、思う？」

『ジャニーさんから許可が出てなくて、まだ、って感じです』

佐久間「なんで？なんでやめちゃうの？」

『なんとなく、ケジメって感じ、です』

深澤「……色々、あったから？」

佐久間「そんなの嘘でしょ、ねぇ、なんで嘘ついてまでこの仕事やめたいの？うたが大好きな仕事をそう簡単に手放す訳ないじゃん」

『…でも、もう、いいんです』

佐久間「所詮、その程度だったのかよ！！！俺らが必死でうたみたいになりたいって追いかけてたのに、うたは別に仕事への興味なんて無かったってこと？どうせ、俺らのこと売れねぇ奴らってバカにしてたんだろっ！！！」

深澤「佐久間、いくらなんでもその言い方はダメだ」

佐久間「………頭冷やしてくる」

怒り任せに何もかも言ってしまったけど、自分の言葉が真実じゃないってこと、うたの泣きそうな表情を見ればすぐに分かった。

うたの大切な人が2人もこの世を去ってしまってから、まだ一度もうたは泣いてない。

そんなうたが泣く寸前の表情をしているってことは、俺は取り返しのつかないぐらい最低なことを言ってしまったんだろう。