10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ41)

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Miyadate side

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まさかとは思ったけれど、うたは最近免許を取って買ったばかりの中古の車の鍵を持って出て行った。

こんな状況で気が動転して事故でも起こすんじゃないかって止めようと思ったけど、事故っていうワードを出すだけでも気が引けてただ見送ることしか出来なかった。

いつもそうだ。

いつも傷つくのはうたで、でも俺らはその傷さえも癒せない。

何もかも全部自分で抱え込んで崩壊寸前にまでなっても、うたは泣き言一つさえ言わない。

でも今度ばかりは、そうもいかないはずなのに。

体のあちこちに痛々しい怪我を負った葵くんは俺が見ている間に何度か目を覚まし、熱に浮かされた目で泣いていた。

うたがいない状況が怖かったのか事故のことを思い出して俺に抱きついてくることも。

大丈夫だよって確証のない言葉を何度もかければやがて疲れたように眠る。

うたは悉く他の人を優先する人だ。

もしも自分より傷ついているように見える人がいたら、勿論その人を労わるだろう。

そしたら、自分のことは二の次で、心が壊れてしまうかもしれない。

そんな淡い不安はいつの日か現実となる。

『ただいまー！』

「うた、お帰り」

『ごめんなさい遅くなっちゃって』

「ううん、全然。さっきまで葵くん起きてたんだけどね、もう寝ちゃった」

『でも熱ちょっと下がったみたいですね。ほんとありがとうございます』

「これからも何かあったら俺ら呼んでよ？今日だって俺が来なかったらどうするつもりだったの」

『あー、誰かに電話してお願いしようかなって、思ってました』

「いつでも電話していいからね」

『葵、皆さんのこと好きなので時々電話するかもしれません』

「それは全然いいけど、うたもね」

11月のある日。

うたと最後に会ってから3日が経っていた。

相変わらずうたからの電話は無いけどその代わりふっかのところには葵くんからの電話があったみたい。

電話の向こうで泣かれちゃったよ、だなんて嬉しさ半分悲しさ半分の表情をして言っていた。

その日、仕事から帰ればしばらく見ていなかったポストにご葬儀の案内状が入っていた。

おじいちゃんとおばあちゃんと仲良くしてもらっていたので、仕事の都合が合ったらで構いませんので最期の挨拶に来て頂けないでしょうか。

そんな堅苦しい言葉が並んでいた。

その筆跡は微かに震えていて、見えないうたの心の内が少しだけ見えたような気がした。