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Hauta side
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『…………嘘、だ、ねぇ、違う、そんな、はず、ないって、ねぇ、嫌だ、お願い、』
「お兄ちゃん！！！」
『違うでしょ！！！違うって、これは、別の人だからっ！！！』
「ねぇ！！おにいちゃん！！！！」
廊下から葵の声が聞こえて来たかと思えば、車椅子に乗ったまま僕を羽交い絞めにしようとする。
そんなはずないって眠ったままのおじいちゃんの体を揺する僕を引き剥がすように。
その拍子に顔の上に掛けられた白い布がひらりと落ちて、僕より少し低い場所にいる葵はヒュッと喉を鳴らした。
聞き馴染みのある音に、車椅子の上で小さくなる葵の背中を撫でる。
涙がポロポロと溢れて僕のクタクタになったシャツを染めた。
「………っ、は、はぁっ、に、ちゃん、っ、」
『ごめんね、見たくなかったよね。ほんと、ごめん、大丈夫だよ、ゆっくり、ね？』
すっかり雨は止んで、どんよりとした空気だけが残された。
葵の呼吸が落ち着いた頃にはおじいちゃんが僕たちに迷惑をかけないようにって昔から手配していた葬儀屋さんが来て、無機質な資料だけ残して2人を連れ去ってしまった。
この後おじいちゃんとおばあちゃんは葬儀式場の安置所に行って、僕らはお葬式の準備をしないといけないだろうし。
もう死んでしまったんだと現実を受け入れれば理解は早かった。
おじいちゃんもおばあちゃんも知り合いが多いから全員に連絡するとなれば時間はかかるだろうから急がないと。
『あおい、』
「………ん、」
『今日何食べたい？何か食べて帰ろうか』
「……いい」
『そっか。じゃあお兄ちゃんが久しぶりに作るよ。冷やし中華にする？』
「……もうっ、冬になるのに？」
『葵好きじゃん、冷やし中華。あー、でもあれか、僕が作る錦糸卵が均一じゃないから嫌なんだっけ？』
「…別に、嫌じゃないけど、」
『おばあちゃんの冷やし中華の方が好きだったもんな』
「……ん、っ、」
マネージャーさんが運転する車の中で、泣くだけ泣いた葵はすぐに眠ってしまった。
家に着いても起きないから同じぐらいの身長の葵を背中に背負って家の中に入る。
ソファに下ろしても上着を脱がせても起きない。
涙の残る頬をそっと撫でた。
『仕事、途中で投げ出してきてしまって本当に申し訳なかったです』
「こればかりは誰も葉歌さんを責められません」
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作者名：Radu | 作成日時：2021年6月7日 21時
