10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ35)

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Iwamoto side

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だからこそ驚いた。

彼がこの後こんなことを言うから。

『どうやって、断ったら先方を傷つけないかなって、ずっと、悩んでるんですよね』

岩本「…は？」

『そ、んな怖い顔しないでくださいよ！ここ数日ずっと悶々としてたんです。岩本くん、なんかいいアイデアないですか』

岩本「ないよそんなの」

『……ですよね』

岩本「っていうか、なんだよ、そんなことかよ！！色々心配したんだからな？マネージャーさんもなんかもったいぶるから悪いことでもあったんじゃないかって、俺ら思ってたんだからな！？」

『え、だって！待って、なんで怒られてるの、僕、』

深澤「何の話？照の声響いてるよ？」

岩本「うたがさ、まーた一人で悩んでたんだよ。しかももう決断してるのにさ」

深澤「決断してるならそれは悩んでるって言わなくない？」

『そうだよ照くん。僕悩んでるだなんて一言も言ってないし』

岩本「待って、俺が悪いの？阿部だってうたに何かあったのかもしれないって言ってたし」

深澤「あぁ言ってたかもね」

岩本「ソロデビューの話来てたんだってよ？」

深澤「マジ！？え、する、の？」

『しません！僕は一生この事務所から出るつもりないですし、なにしろスカウトされた事務所の人が酷いんですよ？金はこれぐらいでどうだ、とかそんな話ばっかり！僕のことをただの駒としか思ってないような。別に駒として使われるのはいいけど、それならやっぱりこの事務所にいたいし』

岩本「それで、どう断るか悩んでるんだって」

深澤「へぇ、そっか。いいんだそれで」

『いいんです。このまま、ずっとみんなと一緒にいたいし』

この時、酷く焦ったのを覚えている。

年下で、守ってあげたい存在で、時々おっちょこちょいな友達。

そんな風に思っていたうたの目の前には多くのチャンスが落ちている。

それなのに自分はどうだろうか。

そのチャンスにすら気付いていないのかもしれない。

取りこぼす毎日なのかもしれない。

深澤「焦んなくていいよ。俺らは俺らのペースで、テッペン目指そうよ」

岩本「そうだな」

深澤「うたには積み上げた努力がある。その量は俺らだって負けるつもりはないよ」

岩本「だな」

映画はやがて完成し、日本では大ヒットを記録した。

その年の邦画No.1となり、俺らの名前も映画を観てくれた人に届いたみたいだった。

そして、うたは日本を飛び出した。