10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ34)

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Iwamoto side

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視線が交差して、ふわっと微笑まれて、また目が逸らされる。

その繰り返しだ。

明日、大きな会場での撮影がある。

要するに大会のシーン。

今日はそのために振りを完璧にして、動きを確認する日らしい。

振りとかアクロバットとかは大体が俺らに任されていて、振付師さんから信頼してもらえているみたいで結構嬉しい。

俺らが踊ってる間、殆どの俳優さんは休憩に入っていてこのスタジオにはいない。

それなのに、うたは後ろで座ってずっと見ている。

鏡越しに目が合って、微笑まれて逸らされる。

チラチラとうたの様子を確認しているのは俺だけじゃないみたいだ。

それをただの偶然と思ってるのか、それとも自覚があるから逸らすのか。

体育座りのように折られた左足に対して、右足はだらんと伸ばされている。

パタパタと手で申し分程度の風を足に送ってるのだって見たし、何度も擦ってるところも見た。

なんか、休憩の度にアイシングしてもらって専門の人にマッサージしてもらってるのにあの状態なんだって。

帰りの車に乗っちゃうと家に着いても歩けなくって、玄関までの数歩ですら5分ぐらいかかるんだって。

俺がそういうことを知らなかったのはまだ分かるけど、俺より仲が良い佐久間とか舘さんとかですら知らないんだから、全部抱え込むな！って感じ。

まぁ、言ったって分かってくれないだろうけど。

岩本「さっきのシーン、すごかったね」

『あの会場で撮影が出来る日が本当に限られてるからそれまでに完璧にしなきゃって』

岩本「頑張ってんな」

『……今、僕にできることはこれぐらいだし』

岩本「楽しい？この現場」

『うん』

岩本「じゃあなんでそんな楽しくなさそうな顔してんの？俺らが知ってるうたはどんなに辛くても楽しいって感情だけは表に出す人だよ」

『………いっこ、言いたいことがあって』

岩本「聞くよ。しばらく俺らもうたも休憩みたいだし、最近ゆっくり話せてなかったよね」

『……なんか、あのっ、』

岩本「ゆっくりでいいよ」

『………ソロ、デビュー、しませんかって、』

その言葉が届くのは時間の問題だっただろう。

こんなにも才能に溢れた人をジュニアのポジションに閉じ込めておく必要はない。

このジャニーズの世界をもしも飛び出したなら、もっとたくさんの人が彼の存在を知って好きになるのだろう。

その方が、彼の人生はもっと輝くのかもしれない。