10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ26)

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Hauta side

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『…忘れた、わけじゃない、ですよ』

「じゃあなんで、あの子に一人で死ねって言えなかった？」

『そんな、言い方！！』

「だってそうでしょ？うたは大勢の人に顔が知られてて、ファンも多い。これから決まってる仕事だってあるし全部が無くなるんだよ？大してあの子は何もない、普通の女の子じゃん。価値が違うんじゃない？」

『彼女を、悪く言わないで下さい！！！』

「怒ったね」

『………は、？』

「ここ来てから、ずっとうたが無表情だったから試してみたんだよ。もしかして感情丸ごと無くなっちゃった？ってビックリしたから」

『……なんだ、』

「本心じゃないよ？ごめんね。彼女のこと、大切だったんだね」

『………好き、なんだ』

「好きな人のことは守ってあげたいとかってよく言うけどさ、うたの場合は違ったんだもんね。一緒にいてあげる方がいいって思ったんでしょ？」

『というか、僕は夏梅を守るに値する人間じゃなかった、』

「残念だけどね。彼女の気持ちに引っ張られて、自分に向けられた愛とかその他諸々を忘れちゃダメだよ。うたは、1人じゃないんだよ？」

『………ん、っ、』

「あーあー泣け泣け！泣き顔は一丁前に高校生だな！！」

『……きらい、』

翌日、事務所の人がやって来て今後の予定が告げられた。

そこには僕の意志が介入する隙間なんてなかった。

高校生活を満喫している僕への当てつけ行為だとしか思えなかった。

「映画の話が来ている。去年のダンス映画の続編だ、やるよな？」

『…えぇ、勿論です』

「公開は2014年の秋で決まっている、撮影は2週間後からだ」

『分かりました』

「退院はいつだ？」

『来週と聞いています』

「1週間で今まで鈍った分を取り戻せるのか？」

『……早めて頂けないか、お願いしておきます』

「それから、高校はどうする？やめて通信にするか留年覚悟か」

『留年でいいです、なんなら中卒でもいいし』

「通う暇は無くなるぞ？」

『別に構いません、それが事務所の方のご意向でしょう？』

「女とは別れろ、二度と会うな。そもそもジュニアの分際でこんな映画の仕事まで取り付けてもらえるのがありがたい話なんだから、彼女だなんて、うつつを抜かすな」

『………申し訳ないです』

ひと夏の思い出は泡沫となって消えた。

あの事件以来転校した彼女とは本当に1度も会っていない。