10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ3)

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Hauta side

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1枚の契約書を残してその人は帰って行った。

両手の震えが止まらない。

その震えが全身に波及して息の吸い方さえも分からなくなる。

喉がきゅーっと絞まったような感覚。

目の前が少しずつ真っ暗になって、自分が立っているのか座っているのかさえも分からない。

「お兄ちゃん！！！！」

その声を最後に意識を失った。

次に目を覚ましたとき、明るかったはずの外はすっかり暗くなっていた。

確かにそこは自分の部屋の天井だ。

首元がスッと冷えるような感覚が気持ち悪さを誘発する。

1階に降りて行けば医学部の大学1年生となった弟の葵が夕飯の準備をしていた。

僕の姿を見ると火を止めて駆け寄って来て、抱きつかれた。

『……ごめんっ、』

「お兄ちゃん、過呼吸起こしたの久しぶりだったから、怖かった」

『いつも、ごめんね』

「ううん、いいの、お兄ちゃんとハグしたらチャージできた」

『勉強忙しいのに、夕飯までゴメン』

「お兄ちゃん謝ってばっかだよ。何もお兄ちゃん悪くないのに」

『……そっか、』

「入るの？」

『………入るしかない、って感じだよね』

「大人の世界って嫌だね。お兄ちゃんは偉いよ、その中で生きてたんだから」

『今は違うけどね』

「嫌なら辞めちゃえばいいんじゃない？そもそも事務所なんかに入ってなくてもお兄ちゃんはやっていけそうだし。でも、仮病だなんてあの言い方酷いよね」

『……まぁ、知らない人からしたらそうかもしれないし。実際、自分に甘えてるだけだろうし』

「僕は、正直に言うとSnow Manさんの中で踊って、歌ってるお兄ちゃんが見たいな。絶対カッコイイだろうし！
無理にとは言わない、体調だってあの人が考えてるよりずっと良くないし、いきなりバリバリ仕事しますだなんて大変だろうから」

『………おじいちゃんと、おばあちゃんも、喜ぶかな』

「喜ぶよ、絶対」

『考えてみる。折角貰えたチャンスだもんね』

「でも、慌てないでね」

こたつで葵と2人、鍋を食べたあの夜。

週に1,2回買い物に出かけるのがやっとの体力のくせに、何故かSnow Manのみんなと踊った時のことを思い出した。

それに、葵が数年前の少クラの録画なんかを引っ張り出してくるから余計に。

夢を見てるんじゃないかってぐらい出来過ぎた現実だったけど、それでもその夢に乗っかりたいと思ってしまったんだ。