10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ17)

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Hauta side

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みんな泣いていた。

涙を流していない人も、心の中で泣いていた。

僕は、分からなかった。

自分の感情の在処を探せなかった。

日本の夏の暑い日、僕の原点を作ってくれたあの人はこの世を去った。

アメリカにいた僕は、妙な胸騒ぎで何かを察知した。

心積もりが出来ている別れの方がうんとマシだろうって思ってたけど、そんなことはなかった。

『僕さ、この仕事辞めようと思うんだ。だから僕のことクビにして』

「出来ないよそれは」

『理由も聞かないでそういうこと言わないでよ』

「理由を聞いたって、僕の答えは変わらないよ」

『そういうの、偽善者って言うんじゃない？』

「ドラマみたいな言葉を使うね、Aは。でもダメなものはダメ。仕事をお休みするのはいいけど、僕の前からはいなくならないでよ」

そんな風に駄々をこねて、僕を引退から活動休止にしたのに。

そっくりそのまま言い返してやる。

僕の前からいなくならないで。

そのまんま。

そのまんま。

道標だったんだよ？

全部、何もかも、ジャニーさんが教えてくれたんだよ？

僕をこの世界に誘ってくれたのもジャニーさんでしょ？

才能があるよっていつも言ってくれたじゃん。

もう、二度と言ってくれないの？

僕には広すぎる、アメリカのホテルの部屋で1人ぼっちだった。

泣きも喚きもせず眼下の夜景をただ眺めていた。

気持ち悪い。

磨き上げられたホテルのトイレで何度も嘔吐した。

食が合わないのか、ただ単に気分の問題だろうけど、こっちに来てから暴飲暴食を繰り返していた。

その度に右手を口の中に無理矢理入れて全て吐き出す。

吐き出したそれの中に、赤が混じっていてまた溜息を吐いた。

仕事の最中も容赦なく襲われる胃痛のせいで、仕事はうまくいっていない。

日本にいればきっと9人のうちの誰かが強制的に病院へ連れて行ったんだろうけど、今はバラバラだし。

もういいや。

突然消える意識に体を任せて、冷たい大理石に体を打ち付けた。

別れは突然のことで、全ての感情を放棄するには十分な苦しみだった。

何度も行ったり来たりをしたけど、それでもずっと見失わなかった原点を、喪失した瞬間だった。

あの夜景のような輝きは、もう僕にはない。

夢を見ていた。

この夢の中に閉じ込められてしまいたい。