10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ16)

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Hauta side

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『でもね、やっぱ無理だと思う。だってこの体の状態見てよ？リハビリのモチベーションは完全にどっかへ行っちゃったし、もし仮にアイドルになれたって、寿命はたかが知れてるよ』

「Aはさ、人を喜ばせるのも得意だけど人を悲しませるのも得意だね」

『………ごめんなさい、そんなつもりは無かった』

「まぁいいよ。おそばの話を覚えていてくれただけでも収穫アリだし、今度ジュニアの子がここに来ると思うから」

『え？』

「じゃあね」

嵐のように去って行ったジャニーさんを見送った数日後、本当に言ってた通り佐久間くんと深澤くんが来てくれた。

結局2人の目を見てたら説得されちゃって、次に頭を下げたのは僕の方だった。

「珍しいね、YOUが忙しい僕を呼び出すだなんて」

『……今まで、横柄なこと言っててごめんなさい。
ジャニーさんにスカウトしてもらえたってだけでも幸せな話なのにさ、頑なにアイドルは嫌だ！だなんてこと言って、ほんと最低だよね。
でさ、やっぱりやりたいです。自分の好きなダンスを続けて完璧に極めて、誰かに幸せを与えられるような人間になりたい』

「俳優の仕事は好きじゃないの？」

『勿論今は好きだよ。でも、好きも嫌いも分からずに今まで走って来てたかなって感じ。
本気でこれだ！って思えたのはダンスだった』

「特例だよ？AだからOKするんだよ？」

『……もったいぶらないでよ！』

「じゃあ、YOUも今日から正式なジャニーズジュニアだね」

そう言って笑ったジャニーさんの顔を、僕は一生忘れない。

・・・

「とうとうデビューだね」

『ありがとう、最高のプレゼントを』

「どういたしまして。おそばはどうなった？」

『あのね、みんなに配ったよ。9人に、おばあちゃんの秘伝のレシピで』

「それはれっきとした物の話でしょ？」

『分かってるって。少なくとも、僕を応援してくれてる人には幸せを届けようと努力しているつもり』

「Aの幸せは？」

『僕は、その次でいいよ。みんなが幸せなら十分だな』

「それじゃダメだよ。幸せを届けたいなら、まずは自分が幸せの渦の中にいなきゃ」

『なんか、聞いたことありそうな話だね。でも2つのことを追いかけるのは苦手なんだ。だから、みんなの幸せを求めた先に、僕の幸せもあるのかなって思ってる』

「それは、いい考え方だろうね」

あの年の、6月のこと。