10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ14)

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Hauta side

それが、社長との出会いだった。

知らない人とは話してはいけません、と大人だらけの世界で生きてる僕だからこそ口酸っぱく言われてきた。

けどその時は、気付いたらそのおじさんをさっきまでいた個室に案内していた。

「初めまして、Aくんのお祖父様ですか？」

「えぇそうですけど」

「私、ジャニーズ事務所という会社で社長をしておりますジャニーです」

「……あぁっ！まさか、孫を？」

「もしよろしければ、ウチの事務所に入っていただけないでしょうか？」

僕はそんな会話を聞き流して目の前の料理に夢中になっていた。

自分のことじゃないだろうって思ってたし、大人の話なのかなって。

だから、突然ジャニーさんが頭を下げた時も、自分に話が回ってきた時も、とにかく驚いた。

「Aは、どうしたい？」

『……ごめんなさい、何も、きいてなかった』

「この方はね、アイドルってお仕事をしてる人たちをまとめる会社をやってらっしゃるんだ。
Aもそのアイドルにならないか、って誘われてるんだよ」

『アイドルって知ってるよ！おどったり、うたったりするお仕事でしょ？』

「そうだね。今までの演技のお仕事とはちょっと違うかもね」

『うーん、僕ね、かんとくさんにほめられたから、このお仕事好きだよ』

「続けたい？」

『分かんない。けど、アイドルにはなりたくない』

「そっか」

その当時の僕は何も知らなかったから、あろうことかジャニーさんの前でその誘いを断った。

こんな風に泣けるなんてすごいね、まるでAじゃないみたいだね、そう言ってくれるおじいちゃんとおばあちゃんが大好きだった。

子役の仕事を辞めちゃったらそう言ってもらえないんじゃないかって思った僕は、はっきりとアイドルにはならないと言ったのだろう。

「じゃあさ、僕の事務所に入ってくれないかな？」

『……じむしょ？』

「そう。お仕事はこれまでと変わらずに、子役のお仕事が出来るよ。
けど、もしもいつかAくんがアイドルの仕事をやりたいって思った時に、すぐに僕に言えるように。
この事務所に入ってくれないかな？」

『お仕事がかわんないならいいですよ』

「そっか、ありがとう。あのね、Aくん。君は人を幸せにする力があると思うんだ」

『幸せ？僕、おばあちゃんの打ったおそばを食べてる時がいちばん幸せです』