10人目の居場所は、ここに。ー3ー (ページ13)

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原点は、ここに。ページ13

Hauta side

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夢を見ていた。

永遠にこの夢が醒めなければいいのに。

永遠にこの夢の中で溺れていたいのに。

10歳、小学5年生の春

右も左も分からず子役の仕事を始めてから2年が経っていたあの頃。

笑う、泣く、怒る、悲しむ、その感情表現が豊かだったら大人に褒めてもらえる。

それぐらいの感覚で仕事をしていた。

最も、それが仕事だとも分からずお金が発生することなのだということさえ理解していなかった。

ただ、現場まで迎えに来てくれるおじいちゃんがいつも優しい表情をしていたから嬉しかったんだ。

フランス人のおじいちゃんは結構厳しいところもあったし、日本人とは違うその顔が少し怖く感じた時もあった。

けど、「お疲れ様、今日も頑張ったね」と堅物そうな顔に反した穏やかな日本語でねぎらってくれるその言葉が欲しくて仕事を続けた。

両親からの関心が向けられていなかった僕にとっては、おじいちゃんとおばあちゃんの笑顔こそがその頃の生き甲斐だった。

おじいちゃんはたまたま仕事の関係で来た日本で、言葉も道も分からず東京のど真ん中で右往左往していた時に声をかけてくれたおばあちゃんの惚れこんで、初対面なのに結婚して欲しいって熱く語りかけたらしい。

それからというもの、この異国の地で暮らし、今じゃ日本人以上に日本人だ。

日本文化をこよなく愛し、畳に布団を敷かなきゃ寝られないと言うほど。

あの時も、ジャニーさんにスカウトされたその日も、行き先は高級懐石料理店だった。

案外ケチで余計な物は買わない主義なおじいちゃんだけど、食については別で、人生の肥やしになるからとただの小学生が行くにはあまりにも高級すぎる店にいつも連れて行ってくれていた。

小学生のくせにそういうお店には慣れていて、トイレに行ってくる、と個室を離れた僕は廊下を歩く前の人がポケットからハンカチを落としたのに気が付いた。

急いでそれを拾い、渡せばそのおじさんは笑って僕の頭を撫でてこう言った。

「君は優しいね」

『たまたま見つけたので拾っただけです』

「それでも優しいよ。よく見れば、君のことをどこかで見たことがある気がするね」

『かんちがいだと思います』

「違うよ、君は葉歌Aくんかな？」

『はい』

「すごいオーラだ、思っていたより何倍も」

『……おーら？』

「今日は家族の人と一緒に来たのかな？もしよかったら席まで案内してほしい」